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日蓮大聖人・池田大作

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「大三国志展」を見て(上) 「誓い」に生き抜く 人生の名画を!

2008.7.6 随筆 人間世紀の光5(池田大作全集第139巻)

前後
6   動乱の
    勝利の彼方の
      指揮執れる
    世界の孔明
      涙溢れむ
 劉備玄徳が三度にわたって諸葛孔明の草廬を訪れた「三顧の礼」のコーナーも、味わい深かった。
 中国の国宝に当たる国家一級文物の「三顧茅廬図ぼうろず」(十五世紀)を筆頭に、日中の錚々たる画家たちが「三顧の礼」の名場面を渾身の力で描いている。
 この時、劉備は四十七歳。二十歳も若い青年・孔明を、最大の礼を尽くして迎えた。
 その誠意に、若き孔明は感激し、決然と立つ。
 「士は己を知る者のために死す」(『史記』)である。
 以来、孔明は、自分を見出し、天下の命運を託してくれた劉備に、ただ真っ直ぐに「報恩」の誠を尽くしきっていくのである。
 劉備と孔明の対面は、まさに"歴史を変えた劇的な出会い"といってよい。私も、若き創価の孔明たちとの出会いには、真剣勝負である。
7  この最初の語らいの折に、孔明が劉備に説いたのが、いわゆる「天下三分の計」──魏と呉と蜀の「三国時代」へのビジョンであった。
 国は乱れ、民は疲弊する、とめどない戦乱の世を、いかに鎮めゆくか。その道標として「一極」の独裁でもなく、「二極」の対立でもない、「三極」による安定を──まさに、発想の大転換であった。
 一人の青年が描いた画期的な構想から、無秩序な群雄割拠とは異なる、三国共存の新時代が始まったのである。
 戸田先生は、激動の時代を勝ち抜き、世界の平和を創造しゆく智慧として、孔明の如き優れた構想力を磨けと、繰り返し教えてくださった。
 忘れ得ぬご指導である。
 一九七四年(昭和四十九年)から七五年の二年間で、私はアメリカを三回、中国を三回、さらにソ連を二回、訪問し、交流を広げた。
 コスイギン首相、周恩来総理、キッシンジャー国務長官はじめ、三国の首脳とも胸襟を開いて対話を重ねた。
 私は一民間人として、平和主義、文化主義、教育主義、そして人間主義という理念を掲げ、三国を結び合いながら、東西冷戦下の世界を、調和と安定の方向へ少しでも前進させたいと願ったのだ。
 十一年前、インドを訪れた折には、ナラヤナン大統領との会見や記念講演で、『三国志』を紹介し、"米国・中国とともにインドが三極の主軸となり、世界の平和へ協調する新世紀を"と展望した。
 大事な点は、鋭く現実に即応しつつ、"第三極"ともいうべき新しい発想、新しい眼で、世界を見ることだ。
 私はサミット(主要国首脳会議)についても、十年前から、ロシアに続く中国やインド等の参加など、地球一体化時代に即応した"枠組み"の拡大を提唱してきた。現在、そういう方向が定着してきたのは、嬉しい限りである。
 七日に開幕する「北海道洞爺湖サミット」も、史上最大規模の参加国となる。大成功を心から祈りたい。
 ともあれ時代の大局を見つめながら、たゆまず対話を!
 我らは、民衆の幸福のため、社会の安定のため、世界の平和と繁栄のために、人間の壮大な連帯を築いていくのだ。

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