Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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ラモス フィリピン共和国大統領 ピープル革命の英雄

随筆 世界交友録Ⅱ(後半)(池田大作全集第123巻)

前後
4  「歴史をつくる人間」の条件とは何か。
 大統領は「人間の資質で何を重要視するか」と問われて答えた。
 「二つあります。一つは、大勢の人々に奉仕するという確固たる使命感。自分の使命は必ず成し遂げるという決心がなければならない。二番目は、それと一体のことだが、冷静さです。どんなプレッシャーがあっても、揺るがない不動心です」
 抑圧政権の打倒に立ち上がった理由についても、大統領は「私はプロの軍人として、国民に奉仕するという自分の任務を遂行したのです」と語っている。
 その使命感から、生命をなげうって立ち、「直接、民衆に呼びかける」戦いを開始したのである。
 あの「ヒューマン・バリケード」も、“今、動かなければ”と家を飛び出した普通の人々の「使命感のスクラム」であった。
 その一方で、政府軍は、ただ、上からの指示を待っていた。
 ここに分岐点があった、と私は見たい。
5  国家主義から人間主義へ
 九六年三月、創価大学主催の第五回「環太平洋シンポジウム」が、マニラで開かれた。「技術と文化」をテーマに、十七カ国・地域の学識者が集った。ラモス大統領は、シンポジウムに、わざわざ基調講演を寄せてくださった。
 講演のタイトルは「人類に奉仕するテクノロジー」。大統領は、もはや時代は国益の概念に縛られる「国家主義」を破壊すべきときであり、地球全体の利益を考える「人間主義」から知恵を引き出すべきだと論じておられる。
 そう。アジア・太平洋時代とは、抑圧されてきた側の人々が立ち上がる時代である。国家主義、帝国主義、軍国主義、物質主義によって虐げられてきた「人間」の側からの反撃の時代でなければなるまい。
 桎梏をはねのけ、「人間らしく生きたい」という願いで民衆が連帯する時代。その劇的な幕開けが、ピープル革命であった。それが、三年後の「東欧革命」にも、冷戦の終結にもつながっていったのである。
 ラモス大統領の信念は「呼びかけること」。朝鮮戦争、ベトナム戦争もわが目で見てきた。その体験から、絶対に流血はいやだという。
 身を挺して国内の融和に努力を重ね、九六年九月には、イスラム教徒の「モロ民族解放戦線」と和平の合意に達した。約三十年間、ミンダナオ島を舞台に十数万人もの犠牲者を出した紛争に、ピリオドを打ったのだ。
 和平の調印式。大統領は叫んだ。
 「きょう、われわれは歴史の瞬間を目撃しただけではありません。われわれは『歴史をつくった』のであります!」
 感無量の声であった。勝利の喜びの声であった。新生フィリピンから世界に広がる声であった。

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