Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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ビレンドラ ネパール王国国王 「慈愛の同盟」をめざす

随筆 世界交友録Ⅱ(後半)(池田大作全集第123巻)

前後
5  大国意識の醜さ
 日本人は、いつの間にか、大国意識という醜い傲慢にとらわれ、貧しくとも、まじめに人生を生きている人々を尊敬できなくなっているのではないだろうか。
 ネパールで、にわかには信じがたい話を聞いた。仕事で訪れた日本人が車で走っていて、前をあけなかったネパール人の車を強引に止めさせたばかりか、中から運転手を引きずりおろして、殴ったという。
 「人前で、そんなことをやるとは、まるで虫ケラのように思っているのでしょうか」
 余りにも極端な例かもしれない。しかし、「同じ人間として」――これが日本人には、なかなかできないようだ。自分自身が、「人間として」生きるよりも、肩書や立場に生きているからであろうか。
 ネパールの心は違う。
  人間を人間と見る人は
  人間として最高の人間である
  人間を神と見る人は
  その人自身が神なのである(サマの詩から)
 アジアの人々を――同じ人間を見下す傲りがある限り、日本は、その「心」によって衰亡していく以外ないであろう。「近くに友をもてない者は、遠くにももてない」という。世界から孤立して、日本はどうやって生きていけるだろうか。すでに転落は始まっているかもしれない。
 ビレンドラ国王に、私は申し上げた。
 「貴国が生んだ釈尊は教えました。
 『未来の結果を知りたいと思えば、その現在の原因を見よ』と。
 “今”、心に傲りがあり、慢心があり、堕落と油断があれば、どんなに栄えていても未来は下り坂です。
 “今”、民衆の心に決心があり、勇気があり、希望と知恵があれば、未来は明るい。
 『まかぬ種は生えぬ』と言います。今、国王ご自身が、真剣に未来を考え、“種”を植えようとしておられる。すばらしいことです。ご繁栄を祈ります。私どもが熱望しているのは、ネパールのすべての人々の『心からの笑顔』です」
 夜もふけてきた。私は話を終えた。
 「池田会長のネパール滞在が平安で有意義なものでありますように! ぜひ、また、お会いしたいと思います」
 重ねてのご厚情に御礼を申し上げて、王宮を出ると、空は星がふるようであった。澄んだネパールの星空には色が見える。白い星。赤い星。青い星。
 そのまたたきに、釈尊の故郷の悠久を思った。あの星々にとっては、二千五百年の時も、つかの間にすぎないだろう。
 釈尊の心は、まちがいなく、この大地に今も鼓動している。否、これから、いよいよ全世界へ、人間愛の大河を広げていくのだ。今、ようやく、流れは始まったばかりなのだ。
6  「二つの最高峰をもつ国」
 翌日、国王が総長を務めておられる国立トリブバン大学で記念講演を行った。(=著者は同大学の名誉文学博士号を受けた)
 テーマは「人間主義の最高峰を仰ぎて――現代に生きる釈尊」とした。
 宿舎に戻ると、天上には大月天が皓々と輝いていた。突然、大きな流星が、白い尾を引いて、満天の星空を走っていった。
 私は日蓮大聖人が、釈尊生誕の国への私たちの訪問を喜んでくださっている気がした。滞在中、黄金の夕日に染まる峰々も、あまりにも崇高であった。
 荘厳なる自然の王者・雪山。永遠なる精神の王者・釈尊。
 「二つの最高峰をもつ国」に、私たちは学びたい。私たちは敬礼したい。そしてネパール王国が、まばゆき「人間性の大国」として、全世界を照らしゆく日を信じたい。

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