Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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世界最古のポローニャ大学総長 ロベルシ=モナコ博士

随筆 世界交友録Ⅰ Ⅱ(前半)(池田大作全集第122巻)

前後
4  憧れの学都ポローニャ。南国の空は抜けるように青かった。
 ここかしこに中世以来の面影を残す、この古都で、ダンテが学び、ペトラルカが青春を謳歌し、コぺルニクスが天と地を思索した。ゲーテが、パイロンが、デイケンズが清遊した。
 九四年五月、総長の招きで講演のため訪れた私は、感慨深かった。
 学問の都は、自由の都であり、精神の砦である。
 神聖ローマ皇帝フリードリッヒ二世の横暴に対し、学生たちは「われらは一陣の風に屈する湖沼の葦にあらず」と一歩も引かなかった。
 忠誠を誓わせようという権力に徹底抗戦し、ついには教師と学生が一致してポローニァを去って、新たに大学をつくったことも再三あった。
 「力」に屈せず「魂」を死守する──ボローニャ大学旗にしるされた「リベルタス(自由)」の気風が、若きダンテらの魂をはぐくんだのであろう。
 総長室に向かう大学の廊下にも、毅然たる青年ダンテの胸像があった。
 そのダンテも、のちに故郷フイレンツェから追放され、「世界を祖国に」生きる運命となった。
 後世、ミケランジェロは嘆き、怒った。
 「最高の完成者こそ、最大の侮蔑をもって遇されるのか」と。
5  学歴社会といわれる今、大学教育は、いずこに向かおうとするのだろうか。
 もしも、知識のみあって魂なく、権威・権力に盲従する「才知ある動物」を生むだけであれば、何のための大学か。何のための学問か。
 総長は叫ばれた「大学は断じて『野蛮な専門家』を生むところであってはなりません」
 宿舎の近くに、ボローニァ市の中心、ネットゥーノ広場があった。
 その一角には、ファシズムに抵抗して倒れたレジスタンスの青年、学生が一人一人、顕彰されていた。
 自由を守り抜く──ルネサンスの青年と現代の青年を結ぶ清冽な「精神の水脈」を、私は見た気がした。
 (一九九四年十月二日 「聖教新聞」掲載)

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