Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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はじめに  

随筆 世界交友録Ⅰ Ⅱ(前半)(池田大作全集第122巻)

前後
3  冷戦後の世界とは、脱イデオロギーの時代であり、脱国家の時代であろう。それは、ある意味で「友情の時代」とも言えるのではないだろうか。
 友情には、打算も、立場や国の違いもない。上下の差別もない。民族や血の絆でもなければ、利害の絆でもない。ただ同じ「人間として」の絆しかない。
 ユゴーは小説で、革命の動乱にまきこまれた母親にこう言わせた。「おなえは共和派か、王党か? どっちについているんだ?」と問われて、「わたしは子どもたちについています」(榊原晃三訳、潮出版社)と。彼女には、母であることが、すなわち人間であることがすべてであった。
 日本人であり、ロシア人である前に人間である。政治家や芸術家である前に人間である。共産主義者や宗教者である前に人間である。その人間という原点をともに確認し、掘り下げることが、地球時代の今、求められているのではないだろうか。
 そのためには、すべての相違を超えた共通項である人間、人道、人権という次元に立っての語らいで友情を広げる以外にない。私の対話旅も、そのためのささやかな挑戦である。
4  かつてラッセ=アインシュタイン宣言は、人類の未来を案じつつ、メッセージを一言に要約した。「人間であることを忘れるな。そのほかのことは、すべて忘れよ」
 私が世界のリーダーと語りあったことも、そして、この書で伝えたいことも、それ以外のものではない。
  一九九六年 弥生   池田 大作

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