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日蓮大聖人・池田大作

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第29回「SGIの日」記念提言 「内なる精神革命の万波を」

2004.1.26 提言・講演・論文 (池田大作全集第150巻)

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28  「人道的競争」を世界的な規模で
 ともあれ、「人間の安全保障」の推進のためには、新しい大胆な発想と、粘り強い努力の積み重ねが欠かせません。すでにタイのように、「社会開発および人間の安全保障省」を設置した国もありますが、こうした例などを参考にしながら、各国が――牧口初代会長が志向した「人道的競争」のような形で切瑳琢磨し――よい意味での競い合いを行っていくことが、重要ではないでしょしうか。
 また、その取り組みによって得られた情報や経験を共有したり、技術交流や人的派遣を進めるなどして、「人間の安全保障」を世界的な規模で実現させていくべきだと強く訴えたい。
 そして何よりも、そうした挑戦は国家レベルにとどまらず、広範な民衆の理解と行動に支えられてこそ結実します。
 "地球上から悲惨の二字をなくしたい"との師の熱願を胸に、私が創立した戸田記念国際平和研究所では、この「人間の安全保障」と「地球社会の運営(グローバル・ガバナンス)」を関連づけた研究プロジェクトに力を入れ、平和研究の世界的なネットワークづくりに努めてきました。
 また、一人の人間が立ち上がり、自らの可能性を無限に開花させながら、社会に貢献していく"民衆の民衆による民衆のためのエンパワーメント(啓発運動)"は、SGIが進める「人間革命」運動の骨格をなす理念でもあります。
 この理念に基づいて、私どもは社会的な活動として、国連の軍縮キャンペーンや人権キャンペーン、また地球サミット(国連環境開発会議)をはじめとする国際会議に協力する形で、核の脅威展や「戦争と平和」展、「現代世界の人権」展、環境と開発展などを世界各地で巡回し、草の根の民衆レベルでの意識啓発を進めてきました。
 昨年は、平和教育の一環として、パリのユネスコ本部やジュネーブの国連欧州本部などで「ライナス・ポーリングと20世紀」展を巡回し、この2月にはSGIが中心となってニューヨークの国連本部で「世界の子どもたちのための平和の文化の建設展」を開催する予定となっています。
 これらの展示はいずれも、時代変革の波を起こすためにはまず、地球を取り巻く問題の一つ一つを、わが身に引き寄せて考えることが欠かせない、との信念から生まれたものです。
29  万年の未来へ「平和の種」を
 私は現在、21世紀の世界が基調とすべき「平和の文化」を提唱してきた、平和学者のエリース・ボールディング博士と対談を進めています。
 その中で博士は、「人間は、現在のこの時点にだけ生きる存在ではありません。もしそうであれば、私たちは、いま起こっている事柄に、たちまち打ちのめされてしまいます」と述べ、希望を失わないためには長期的な観点で未来を見据えながら、建設的な役割を果たすことが重要であると訴えておられました。
 思えば1975年1月、SGIの発足に際し、私は、世界から集まったメンバーを前に、こう呼びかけました。
 ――皆さん方はどうか自分自身が花を咲かせようという気持ちでなくして、全世界に平和という種をまいて、その尊い一生を終わってください。私もそうします――と。
 この信念は今も、まったく変わるものではありません。平和といっても、決して日常を離れたところにあるものではない。一人ひとりが現実の「生活」の中に、また「生命」と「人生」に、どう平和の種を植え、育てていくか。ここに、永続的な平和への堅実な前進があると、私は確信するものです。
 かつて戸田第2代会長は、万年の未来を展望し、「やがて創価学会は壮大なる『人間』触発の大地となる」と語りました。私どもは、その誇りと使命感を胸に、明年のSGI発足30周年を目指して、「平和の文化」を築く民衆のグローバルな連帯をさらに広げていきたいと思います。
30  語句の解説
 注1 他化自在天
 仏法で説く「四魔」という生命の魔性の一つ。大智度論には、「他の化する所を奪って而して自ら娯楽するが故に他化自在と言う」とある。欲望の世界である欲界に属する六天の最上に住むために、「第六天の魔王」とも呼ばれる。
 注2 ロビンソン・クルーソー
 18世紀に活躍したイギリスの小説家ダニエル・デフォーの『ロビンソン・クルーソー漂流記』の主人公。実話を題材にした創作で、ロビンソンが何度かの航海の後、無人島に漂着し、28年間にわたる自給自足の生活を経て、イギリスに帰りつくまでの話が描かれている。
 注3 アショーカ王
 インド最初の統一王朝であるマウリア朝の第3代の王。在位は紀元前3世紀頃とされる。即位後にカリンガ地方(現在のオリッサ地方)を征服した際、約10万人を殺害し、約15万人を捕虜にしたが、これを深く悔恨し、「武力による征服」を放棄。仏教徒としての信仰に目覚め、平和主義の政治や福祉政策に力を注いだ。
 注4 信託統治理事会
 国連創設当初、アフリカや太平洋など世界の一部にあった未解放の地域に住む人々の社会的前進を図るために設立された機関。最後の信託統治地域であったパラオが1994年に独立を果たしたため、理事会の任務は事実上終了し、現在は必要が生じた場合にだけ会合を開くことになっている。
 注5 国際原子力機関の追加議定書
 核査察強化のため、国際原子力機関と保障措置協定の締約国が追加的に結ぶ議定書。申告や未申告を問わず、すべての核関連施設に対して、抜き打ち査察を含めた強制力のある査察を認めるもので、現在79カ国が署名。
 批准は日本など38カ国にとどまっている。
 注6 ミレニアム開発目標
 2000年の国連ミレニアムサミットで採択された宣言と、1990年代に開催された諸会議で採択された国際開発目標を一つに統合したもの。2015年までに達成すべきものとして「極度の貧困及び飢餓の撲滅」や「乳幼児死亡率の低減」などの8大目標が掲げられている。

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