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日蓮大聖人・池田大作

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2 ”心の距離”を近づける  

「人間と文化の虹の架け橋」趙文富(池田大作全集第112巻)

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8  関東大震災と牧口会長の救援活動
 池田 寛大など意見に感謝します。
 貴国の人々に対する差別が残酷な形で表れたのが、一九二三年、関東大震災の時でした。
 この震災の直後、「朝鮮の人が暴動を起こし、各地で放火や暴行をしたり、井戸に毒を入れたりしている」とのデマが広がり、戒厳令が敷かれました。軍や警察や自警団の手によって、罪もない貴国や中国の人々が数多く犠牲となりました。
 一説では、貴国の犠牲者は六千人以上にのぼるとも言われます。
  じつに悲しむべき歴史です。
 日本人は個人としては、本当に正直で親切です。しかし、団体や集団になると、傲慢になり、嘘をつくことがある。これは、私の率直な実感です。
 戦前の軍国主義の日本にも、そうした嘘や傲慢が根付いていて、民衆を不幸に突き落としたのではないでしょうか。
 それと戦いぬき、亡くなられたのが創価教育の父である牧口初代会長であったーー私は、そのように考えています。
 池田 深いご理解、本当にありがたく思います。
  二〇〇二年の夏、済州大学に語学研修に来ていた創大生と短大生に、私は、お話ししました。
 ”「八月十五日」は日本の敗戦の日であると同時に、牧口先生の「人間勝利の日」である”と。
 日本にも牧口初代会長のように、軍国主義に対し、最後まで信念をもって戦いぬいた人物がいた。
 そのことを、もっと多くの日本人が知るべきです。
 池田 牧口会長は、関東大震災の折も、罹災者の救援活動に率先してあたりました。
 当時、牧口会長は小学校の校長でしたが、罹災した人々への救援物資を、教職員や児童たちと協力して集めたりしました。
 牧口会長は救援活動に励む児童のために、煮芋を用意してあげています。また、こうした助け合いの精神が、一生涯、子どもたちの心に残るようにと、児童たちといっしょに記念撮影もされています。
 そうした牧口会長の行動が、児童たちの眼に焼き付いて離れなかったといいます。
  牧口会長は自身の行動をとおして、子どもたちに生き方を教えていかれたのですね。
 池田 ええ。牧口会長は、何ごとも、みずから積極的に人々に関わっていく方でした。
 震災の時も、教職員や児童たちに、いっしょに救援活動をやろうと自分から呼びかけていったのです。また、地域の避難所として、白金小学校を開放し、催災者を受け入れ、励ましていった。
 牧口会長は、校長と児童との、そしてまた擢災者の方々との「心の距離」を自分から縮めていかれたと言ってよいでしょう。
 そして、子どもたちの汚れのない善性を育んでいかれたのです。
9  「SGI憲章」に記された理念
  教育者として、人道主義者として、牧口会長の新しい一面を見た思いがします。
 その牧口会長の精神が、そのまま池田先生、そしてSGIの方々に受け継がれていることを実感します。
 以前、私は、「SGIのどこがすばらしいか」という話を、学生たちにしたことがありました。
 その時、私は、
 「人類社会のために平和を目的として、人間の価値を大切にしていること」
 「理想と現実を調和させている組織活動であること」
 「組織に嘘がなく、純粋であるとと」の三点を挙げさせていただきました。
 これはまさに、日本人に対して私が望んでいる点でもあります。
 とくに、マスコミなど、言論を扱う人間は、嘘がなく、正直で誠実であるべきです。
 池田 博士のご期待にお応えしていけるよう、これからも、私どもは真剣に努力してまいります。
 一九九五年、私どもは「SGI憲章」を制定しました。その中で、
 「SGIは生命尊厳の仏法を基調に、全人類の平和・文化・教育に貢献する」
 「SGIは『世界市民の理念』に基づき、いかなる人間も差別すことなく基本的人権を守る」
 「SGIは各加盟団体のメンバーが、それぞれの国・社会の良き市民として、社会の繁栄に貢献することを目指す」
 「SGIは真理の探求と学問の発展のため、またあらゆる人々が人格を陶治し、豊かで幸福な人生を享受するための教育の興隆に貢献する」等の理念を明確に記しています。
 どこまでも、「人間主義」の行動が根本です。そして、一人一人が主体者の自覚で、精神の「創造性」を豊かに発揮しながら、社会と人類の繁栄に貢献していくことを目指しています。
 その各国の善意の人々の連帯は、必ずや「平和の文化」の構築と、「心の距離」をさらに近づけることに貢献していくと強く確信しています。

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