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日蓮大聖人・池田大作

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序に寄せて 趙 文富

「希望の世紀へ 宝の架け橋」趙文富(池田大作全集第112巻)

前後
3  池田先生が済州島を訪問してくださったのは、その翌年だった。わが大学から、外国人としては初めての「名誉博士号」を授与させていただいた。
 あの時と変わらぬ先生の笑顔に、私だけでなく、授与式に出席された初対面の来賓の方々も皆、平和で幸福な気持ちに包まれたようだつた。
 その時、私はこう思った
 「戦争のない状態が平和なのではない。日常の人間関係の中で、穏和な品性からにじみでる「真心の笑顔』によって、周りが幸せな気持ちを感じるほど、相手のことを尊重していく心と心の交わりこそ、本当の平和の姿であり、平和の根源ではないか」と。
 戦争が再発しかねない冷戦構造が続いてきた韓半島の状況。そして、国際自由都市の建設を通じた「平和の島」へと、済州島の未来を託しつつ、平和の意味をいつも問い続けていた私にとって、先生の振る舞いは、大きな示唆を与えるものだった。
4  私たちは対談の中で、こうした平和の意義をはじめ、教育の役割や韓日の歴史と未来について語り合った。月刊誌「灯台」(第三文明杜)での連載は、2001年10月号からスタートし、一年間に及んだ。
 このうち、第一章「苦闘の青春――人生の栄冠」と、第二章「済州島――人と自然」では、どんなことを言っても、せいぜい自分の恥を世間にさらすだけなので、自由関達に語らせていただいた。
 しかし、第三章「韓日交流の新しき未来へ」については、両国の歴史認識というデリケートな問題を扱っただけに、その責任感で苦悩する日々が続いたというのが、対談を終えての正直な感想である。
 そんな時、私の心の支えとなったのが、トインビー博士が池田先生との対談集で訴えていた”西欧諸国が科学技術の力で世界を支配した二十世紀に代わって、二十一世紀の人類社会は東アジアが主役になる”との予見であった。
 この予見を自らの信念とした私は、共通の文化を有してきた東アジアの韓国と日本が力をを合わせ、「生命愛」や「人間愛」による世界平和へのビジョンを軸に、新しい時化への準備にあたるべきであると考えた。そして、この未来からの視点に立って、池田先生との対談に臨んできたのである。
5  対談でも語ったことだが、第二次世界大戦が終わった小学四年生の頃から、頭の中を占め続けた一つの疑問があった。「なぜ西洋は東洋よりも強く、常に戦争に勝つのか」という疑問である。
 中学校にも通うことができない家庭環境の中で、小さな草が見せた大自然の生命の偉大さに励まされ、何とか学業の道を歩み続けた時も、その疑問は頭を去らなかった。大学教授になり、一九八〇年夏、東京大学法学部で「韓日の官僚制の比較研究」に取り組むなかで、私はその一つの解答を得た。
 この時の基本研究は、ウェーバーの「支配の社会学」と「合理主義」についてのものだった。この支配と合理主義が、科学技術の分野で徹底化されたことが、静養がつねに東洋に勝る原動力ととなったという、結論にいたったのである。
 しかし同時に、これらの力が世界を破壊し、人びとを悲劇に陥れる原因となってきたこと、そして、その歴史の証拠が、地球上で唯一核兵器が投下された日本と、国土が分断され冷戦構造が今なお続いている韓国に残存することにも、私は気づいた。
 人間の本性には、合理主義の要素となる「理性」だけでなく、愛情と感動の源となる「情性(感性)」、そして聖なるものや宗教性などを通じて人間をより高みへと向かわせる「霊性(精神性)」がある。
 理性と科学技術による合理主義を「機械的合理主義」とするならば、理性・情性・霊性の人間の三つの柱からなる合理主義は「人間的合理主義」と言えよう。
 この人間的合理主義によって世界の平和を築き上げることを「ニュー・ヒューマニズム(新しい人間主義)」と名付けるならば、先導的な役割を担うべきは、その必要性を最も痛感している韓国と日本の国民ではないかというのが、私の考えである。
 韓日両国の国民が、ともに二十一世紀の人類社会の未来に向けて最も望むものがあるとするならば、過去の二十世紀において、一部の誤った思想がもたらした科学技術による「支配」が、再び歴史を逆戻りさせ、悲惨な戦争とその結果としての破滅を招かないようにすることではないだろうか。
 これからの時代における人間関係は科学技術や軍事力による強制的な「支配」関係よりも、霊性(精神性)に導かれながら、生命愛や人間愛による愛情的な「共生」関係こそが基本とならねばならない。
 こうした点は、対談の中で池田先生が強調しておられたことでもあった。
 生命愛や人間愛こそ宇宙や自然を貫く真理であり、この真理に則りながら人生を生き抜くことが大切であること、韓国と日本が平和な世界の建設のために主導的な役割を果たしていかねばならないことを、私は先生から深く学ばせていただいたのである。
 平和を望み、平和に貢献したいと考えておられる方々に、この本が何らかの糧となれば幸甚である。
 結びに、池田大作先生と、発刊にご尽力いただいた徳間書店の皆さま方に、重ねて衷心より御礼申し上げたい。
   二〇〇二年九月  趙 文富

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