Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

第42回「SGIの日」記念提言 「希望の暁鐘 青年の大連帯」

2017.1.26 「SGIの日」記念提言(池田大作全集未収録分)

前後
38  法華経に描かれた竜女の尊極の姿
 このような国連誕生時のエピソードを知るにつけ、胸に浮かぶのは、仏教の精髄である法華経で「万人の尊厳」を説く中、それを現実のものにした具体的な姿として「女性の尊厳」が描かれていることです。
 ――釈尊が、いかなる人々にも尊極の生命が具わっているとの「万人の尊厳」の法理を説き明かし、重要な話は聞き終えたと思った智積菩薩が、その場から去ろうとした。
 釈尊の勧めで、文殊師利菩薩と対話をすることになった智積は、わずか8歳の少女(竜女)が尊極の生命を輝かせて、人々に対する深い慈愛の念を持っているとの話を聞かされる。
 にわかに信じられずにいた智積の前に、竜女が姿を現すが、釈尊の弟子である舎利弗も、まだ幼い彼女の姿を見て、本当にそんなことができるのかとの思いを拭えなかった。
 竜女は尊極の生命の証しである宝珠を釈尊に手渡した上で、舎利弗に対し、自分の本当の生命の輝きを見てほしいと叫ぶ。
 そして、竜女が人々のために尽くす姿を実際に目にした舎利弗と智積は、文殊の話が真実であると確信するにいたった――と。
 私は、この場面には、「万人の尊厳」といっても、抽象的な理解だけでは完結しえないことが示されていると感じます。
 また日蓮大聖人が、竜女の叫びの核心は、「舎利弗竜女が成仏と思うが僻事なり、我が成仏ぞと観ぜよ」(御書747ページ)との思いにあると強調したように、竜女の尊厳と舎利弗の尊厳は、決して別のものではありません。竜女の尊厳(女性の尊厳)に照らされて、その実感を通し、舎利弗の尊厳(男性の尊厳)も浮かび上がっているのです。
 つまり法華経では、「女性の尊厳」が現実に示されたことで、「万人の尊厳」が真に内実を伴うものとして結晶しています。
 現代の人権についても、女性の権利の重要性が国連憲章に刻まれたからこそ、国連に人権の精神が鮮明な形で宿るようになったのではないでしょうか。
 国連憲章の制定会議で声を上げた女性たちの思いも、女性の権利を大切にしなければ、“人間の権利”を大切にする社会は築けないとの一点にあったに違いないと思うのです。
 UNウィメンでは現在、ジェンダー平等の推進の輪に、積極的に男性も加わることを呼び掛ける、「HeForShe(ヒー・フォー・シー)」のキャンペーンを進めています。
 自由と権利を得られずにいてよい人間などなく、自由と権利を求める行動において差異による区別を設けてはならないはずです。
 ジェンダー平等の目的――それは男女を問わず、全ての人々が尊厳の光を自分らしく輝かせていける道を、皆で大きく広げていくことにあるのです。
 私どもSGIは青年を中心に「人権文化」を担う民衆の連帯を強めながら、「誰も置き去りにしない」世界を築く希望の暁鐘を、力強く打ち鳴らしていきたいと思います。
39  語句の解説
 注1 パリ協定
 2015年12月、フランスのパリでの国連気候変動枠組条約締約国会議で合意された、2020年以降の温暖化防止対策。先進国だけでなく、新興国や途上国を含めた196カ国・地域が協力し、産業革命以前と比べた世界の平均気温の上昇を「2度未満」に抑える目標を掲げる。21世紀後半には、人類の活動による温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、実質的に温室効果ガスの排出量をゼロにすることを目指す。
 注2 「無尽燈」の法門
 仏教の在家信徒である維摩詰が、天女たちに述べた教え。一つの灯火から何百、何千の灯火が点火されても、もとの灯火の明かりが減じることなく、暗闇を照らす光が広がっていくのと同じように、自分自身が「人々に尽くす心」を灯し、その輪を広げていく中で、社会における善が大きく増すことを説いた。
 注3 トインビー・ホール
 1884年にイギリスのロンドンで開設された世界初のセツルメント(隣保館)。貧困に苦しむ人々を救済するための研究と活動に情熱を注ぐ中、31歳で早逝した経済学者アーノルド・トインビーの生涯を偲び、施設にその名が付けられた。住民の生活環境の改善を図る活動のほか、大学公開講座などの教育活動が行われた。
 注4 ダモクレスの剣
 「身に及ぶ危険に常にさらされている状態」を示す譬え。紀元前4世紀、シラクサの王ディオニシオスが、王の幸福を称賛する廷臣ダモクレスを、頭上から1本の毛で剣が吊された王座に座らせ、栄華のうちにも常に危険があることを悟らせた故事に由来する。ケネディ大統領が1961年9月の国連総会の演説で言及した。
 注5 ラッセル=アインシュタイン宣言
 1955年7月、哲学者のラッセルと物理学者のアインシュタインら11人が、核兵器廃絶と戦争のない世界を呼び掛けた宣言。これを基礎に、世界の科学者によるパグウォッシュ会議が57年に発足し、核廃絶の運動を続ける中、95年にノーベル平和賞を受賞。2001年に、宣言を復刻した特装版の第1号が、同会議のロートブラット名誉会長から池田SGI会長に贈られた。
 注6 1325決議
 2000年10月、国連安全保障理事会で全会一致で採択された決議。紛争予防や平和構築における意思決定への女性の参画とともに、紛争下の女性に対する暴力や人権侵害の防止などを国連加盟国に要請する内容となっている。以来、40カ国以上で決議を実行するための行動計画が策定されてきたほか、安保理でも1325決議を補強する六つの決議が採択されている。

1
38