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第33回「SGIの日」記念提言 「平和の天地 人間の凱歌」

2008.1.26 「SGIの日」記念提言(池田大作全集未収録分)

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23  日中平和友好条約締結から30周年
 最後に、日中関係の未来を展望しつつ、東アジアにおける「不戦の制度化」について論じておきたい。
 今年で、日本と中国との間で平和友好条約が締結されて30周年になります。
 振り返れば、日中平和友好条約の締結は、74年12月に周恩来総理とお会いした折、周総理が強く希望しておられたものでした。私もまったく同感であり、その会見の翌月にアメリカのキッシンジャー国務長官と会見した際には、日中友好にかける私の信念と周総理の思いを伝え、賛意を得ることができました。
 75年4月に再訪中し、トウ<登におおざと>小平副総理と条約の早期締結について語り合い、三木武夫首相への伝言を託されました。日本政府にそれを伝えた後、政府間交渉が再開されました。そして78年8月、条約が調印され、日中関係の新たな歴史が始まったのです。
 以来、さまざまな分野で交流が進み、経済面での相互依存が深まる中で、今や1年で473万人が往来し、貿易総額も日米間の総額を超える規模に発展するほどの関係が築かれるまでにいたりました。
 また最近は首脳間対話が定期的に行われるようになり、政治面でも協調関係の構築に向けた動きが活発化しつつあります。昨年4月には温家宝総理が来日し、首脳会談が行われ、成果である日中共同プレス発表の中で「協調と協力を強化し、地域及び地球規模の課題に共に対応する」との方針が盛り込まれました。来日の折、私も温総理とお会いしましたが、席上、温総理が「中日友好は、大勢の赴くところであり、人心の向かうところです」と語られた言葉が深く胸に残っております。
 また先月には福田首相が訪中し、胡錦濤国家主席らと会談を行い、環境・エネルギー分野での協力や青少年交流などに関する共同文書が合意されました。
 かつて私が両国の国交正常化を訴えてから40星霜――。日本と中国が、アジアと世界の平和と安定と発展のためのパートナーシップの構築に向けて大きく踏み出したことに感慨を覚えます。
 日中関係の好転とあわせ、日韓関係の改善も進みつつあり、この3カ国の良好な関係が一つのベースとなって、「東アジアサミット」での議論も、地道な地域協力を模索する場として定着してきたと言われています。
 一方、ASEAN(東南アジア諸国連合)も、昨年11月の首脳会議で、地域の平和と安定の維持、非核武装、貧困削減などの目標を掲げる「ASEAN憲章」と、2015年の経済共同体実現に向けた宣言を採択し、地域統合に向けた前進を開始しました。
 私は、日中韓の3国と、ASEANという二つの輪が、平和と共生の方向に向かって粘り強く歩みを続けていくならば、やがて東アジアに「不戦の制度化」を実現することは、決して不可能ではないと確信しています。
 日本では、昨年から「21世紀東アジア青少年大交流計画」を立ち上げ、中国や韓国やASEAN加盟国を中心に、5年にわたって毎年6000人の青少年を日本に招く計画をスタートさせました。
 長らく東アジアにおける青年交流や教育交流を民衆レベルで進めながら、より一層の拡大を呼びかけてきた一人として、計画の大成功を心より願うものです。
 と同時に、この取り組みを単なる交流の機会だけに終わらせることなく、例えば、国連諸機関で働く人々を招いてともに話を聞く場を設けたり、国連が進めている環境教育や軍縮教育に関して一緒に学ぶ機会を持つなどして、青年たちが国境を超えて次代を担う共通意識を育む場にしていってはどうかと、提案したいと思います。
 人類の未来はすべて青年たちの双肩にかかっている――これは、私が対話を重ねてきた世界の識者の意見の一致するところでもあります。
 私どもSGIは、「新しき世紀を創るものは、青年の熱と力である」との戸田第2代会長の遺訓を胸に、今後も青年に一切の光を当てつつ、地球的問題群の解決のために行動する民衆の連帯を築いていきたいと思います。
24  語句の解説
 注1 文明の同盟フォーラム
 スペインとトルコの両首相の共同提案を受けて、2005年9月に国連のアナン事務総長が「文明の同盟に関するハイレベルパネル」を設置。2006年11月にまとめられた最終報告の成果を踏まえ、第1回のフォーラムが今月開催され、「異文化間対話に対する若者の取り組み」などをめぐって討議が行われた。
 注2 「僣主制」への衰退
 プラトンは『国家』の中で、政治制度のあり方を、(1)王制(2)名誉制(3)寡頭制(4)民主制(5)僣主制、の五つに分類。その上で、民主制という「最も高度な自由」が、それがはらんでいる宿命的な内部矛盾によって、僣主制という「最も野蛮な隷属」へと衰退してしまうという“自由の背理”の問題を提起した。
 注3 スペイン内戦
 1936年から39年にかけてスペインで起こった内戦。人民戦線をソ連が支援し、フランコ将軍らによる反乱軍をファシズム陣営のドイツとイタリアが支持した。これに介入する形で、反ファシズムの旗を掲げる「国際旅団」が組織され、ヘミングウェーやアンドレ・マルローをはじめ各国の知識人や労働者が義勇兵として身を投じた。
 注4 IPCC
 国連環境計画と世界気象機関によって1988年に設立。科学的見地に基づいた地球温暖化に関する報告書を定期的に発表し、第4次評価報告書の作成には130カ国以上から約4000人の専門家が参加した。昨年、温暖化に関する共通認識をつくったとして、ゴア前米副大統領とともにノーベル平和賞に選ばれた。
 注5 「バリ・ロードマップ」
 交渉が難航し、日程を延長する形で採択された行程表では、すべての国が参加する特別作業部会を設け、来年の第15回締約国会議までに、数値目標も視野に入れた新たな削減枠組みをつくることで合意。具体的な検討項目として、途上国への被害防止支援や技術移転、新たな資金策の検討、森林減少対策などが盛り込まれた。
 注6 核兵器禁止条約
 この条約の基礎となるものの一つとして、法律家、科学者、軍縮専門家らによって作成された「モデル核兵器禁止条約」がある。97年にコスタリカが国連に提出し、討議文書として配布された。昨年のNPT(核拡散防止条約)再検討会議の準備委員会において、コスタリカにより再び改訂版が提出され、公式の文書となった。

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