Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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生死の流転思想  

「内なる世界 インドと日本」カラン・シン(池田大作全集第109巻)

前後
2  カラン・シン 一九八六年九月、イタリアのアッシジで珍しい異宗教間会議が開かれ、そこで人間と自然の関係に対する世界五大宗教の態度について突っこんだ検討が行われました。その結果、ヒンドゥー教、仏教、ユダヤ教、キリスト教およびイスラム教のそれぞれの見解を述べた五つの声明が作成されました。ヒンドゥー教および仏教の伝統とセム系の宗教の伝統の間には生命流転の問題に関してはっきりした相違点が存在したものの、これらの宣言がすべて、動植物を含めあらゆる生き物に対する尊厳観が必要であるという点で、ほぼ一致したことはたいへん感銘深いことでした。
 この問題は、神性は内在するととらえる東洋的観点からであれ、あるいはそれは「神の創造」の一部であるとする西洋的観点からであれ、いずれにせよ万物に神性がひそんでいるとする概念のなかに、そのカギがあるように思われます。
 何百万という共産主義者を含め、いかなる宗教的伝統とも特定の関係をもたない人々に対しては、生態学的なバランスを保つことの重要性を強調するという非宗教的な形で、この問題全体を提示することができます。
 事実、アメリカの生態学運動およびヨーロッパの緑の運動は、わずかこの数十年の間に起こってきた運動ですが、人間が地球上の絶対主権者であるとする西洋的な主張が、もっと優しく慈しみ深い考え方からの矢継ぎ早の挑戦を受けつつあることを、かなり明確に示しております。広い視野に立つならば、人類が過去数世紀にわたって西洋文明を特徴づけてきた人間中心の妄想を捨て去り、あらゆる存在に対して賢明で、啓かれた態度をとることがきわめて重要です。
3  池田 ただ、われわれには、この世に生まれる前のことも、死後、この生命がどうなるのかということも、客観的に認識することができません。そのため、これを普遍的な生命観として人々に認めさせることができないわけですが、博士は、人類全体が人間以外の生き物を包含した生命尊厳の思想に目覚める可能性について、どうお考えになりますか。
4  カラン・シン 転生の考え方を支持する人々の数はますますふえつつありますが、セム系の宗教が転生の概念を神学上受け入れることは、まずありえないことです。しかし、創造の背後にある神性を強調することによって、敬虔な西洋人を人間以外の生命体の尊厳性に目覚めさせ、認めさせることは可能なはずです。
 転生現象あるいは死後の生命が、それを信じない者に満足のいく形で「証明」されるかどうかは別にしても、すべてのものが相互に結びついている事実は多くの人々が認識しなければなりません。しかし、同時にまた、個性の核となるものはそのまま残さなければなりません。したがって、真に必要なことは、善性の全体論(ホーリズム)をつくりだすために東洋と西洋の両伝統が創造的に融合することです。これによってのみ、この核時代における地球の繁栄を確かなものとすることができるのです。

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