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第27回「SGIの日」記念提言 人間主義――地球文明の夜明け

2002.1.26 平和提言・教育提言・環境提言・講演(池田大作全集第101巻)

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77  共通の歴史認識の土台をつくる
 もう一つの提案は、アジアにおける共通の歴史認識の土台をつくるための共同研究の推進です。
 昨年も、日本の歴史教科書をめぐる問題が起きましたが、過去の歴史認識が近隣諸国との緊張を高めるケースが、八〇年代以降、何度となく繰り返されてきています。単に外交的な問題だけに限らず、歴史教育が子どもたちに与える影響の大きさを考えてみても、憂慮すべき点があるといえましょう。
 この点、歴史学者のエリック・ホブズボーム氏は『歴史論』で、一部の歴史を「人間のもっと広いコンテクスト(=文脈)から切り離す」危険性を強く戒め、「歴史家は、どんなに小さな世界に目をむけていても、普遍性を求めなければならない」と述べています。(原鋼訳、ミネルヴァ書房)
78  二度の世界大戦の舞台となったヨーロッパでは、歴史教育をめぐる二国間対話や多国間対話がさまざまな形で試みられており、九二年には十二カ国の歴史家が中心となって編纂した『ヨーロッパの歴史』も発刊されています。同書の内容には賛否両論あるようですが、対話や協議を通じて自国のみに偏らない歴史認識のあり方を追究しようとしたことの意義は大きいのではないでしょうか。
 私は、アジアにおいても、同様の挑戦が行われてしかるべきだと考えます。
 真摯に過去を見つめることは、真摯に未来と向き合うことと同義です。「対話」を軸に共通の歴史認識の土台を築く努力を積み重ねていくことは、アジアの平和を展望する上でも欠かせないと信じるものです。
 アジアの平和に限らず、「自己規律の競争」「人道的競争」に根差した「対話」「信頼」「協調」こそ、二十一世紀の地球社会、地球文明の構築への基軸となるべきものです。
79  牧口初代会長は、『創価教育学体系』の中で、「受力の生活――依他的生活」でも「自力の生活――独立的生活」でもなく、「授力の生――貢献的生活」へと人間の生き方を転換することが肝要であると訴えていました。(『牧口常三郎全集』5、引用・参照)
 授力とは、今様にいえば「エンパワーメント(力を与えること)」になります。人々を励まし、勇気と希望を与えながら、自他ともの幸福を目指す、価値創造の「貢献的生活」を一人一人が歩むことが、やがて社会を変え、世界を変え、時代を動かすことは間違いありません。
 私どもSGIは、本年も「対話拡大」を合言葉に、各国で「よき市民」として行動しながら、どこまでも「平和」と「共生」の人間主義の連帯を広げていきたいと思います。
 (「聖教新聞」掲載)

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