Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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一橋大学会総会 日本を人道主義の国に

1998.4.25 スピーチ(1998.3〜)(池田大作全集第89巻)

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16  「人生の本舞台は常に将来にあり」
 彼のモットーは「人生の本舞台は常に将来に在り」(前掲「産経新聞」)。
 何歳になっても「これまでの人生は、序幕にすぎない。これからが本舞台なのだ」という意味である。すなわち、「人間は年をとればとるほど、その前途は輝かしい」という人生観である。
 彼が七十四歳の時(一九三三年)、肺炎にかかってしまった。その時、自分は、これまで何をやってきたのかと病床で考え、この思想を抱くに至った。
 そのころ、生涯をかけて訴えてきた「道義に基づく政治」も、平和への努力も、何もかもが期待を裏切られ、時勢は反対に国家主義全盛の方向に動いていた。
 いったい今までの苦労は何だったのか――。希望を失いそうな胸中に浮かんだのが、この言葉だったのである。そうだ! くよくよするのは間違いだ。今まで失敗したとしたら、それは今後に成功するためなのだ、と。
 彼は、こう考えた。
 ――人間は年齢とともに経験と知識を得る。これこそ最高の財産である。だとすれば、死ぬ前がいちばん、たくさんの「精神の財産」を蓄積していることになる。ゆえに、年をとるほど、偉大な事業ができるはずである。
 考えても見よ、六十、七十まで働いて、「財産」をためたとする。これを子孫にも譲らず、社会の役にも立てないで、無駄に捨てる愚か者があろうか。
 経験と知識という「無形の財産」も同じことである。これを利用し、社会の役に立てないで引退するなどというのは、愚の骨頂である。
 財産は人に譲れるが、経験という財産は自分が使うしかない、死ぬ瞬間まで使い切るべきだ――と。
 ゆえに「人生の本舞台は常に将来にあり」。年をとっても、否、年をとったからこそ、「いよいよ、これからが本番」なのである。
 彼は「人を殺すものは労苦ではなく、クヨクヨすることだ」と言っていた。
 あと一カ月で九十六歳という長寿で亡くなったが、最後の言葉は「いい気持ち」であったという。
 (『尾崎咢堂全集』公論社、尾崎行雄『人生の本舞台』尾崎行雄記念財団、『尾崎行雄伝』同財団、伊佐秀雄『尾崎行雄傳』尾崎行雄傳刊行会、NIRA研究報告書『尾崎行雄の政治理念と世界思想の研究』総合研究開発機構、川崎秀二『憲政に光を掲げた人々』憲政に光を掲げた人々普及会などを参照した)
17  創価学会も、多くの人が広宣流布活動のベテランである。その経験を年ごとに、存分に生かしてこそ、自分自身も三世永遠の歴史をつくれる。広宣流布も、いよいよ発展していける。
 それは自立した民衆の精神革命が拡大することであり、民主主義の基盤を固めていくことになるのである。
 私どもの「本舞台」も、いよいよこれからであると申し上げ、本日のスピーチとしたい。
 (東京・新宿区内)

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