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日蓮大聖人・池田大作

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第一回青年部「3.16」記念大会 青年よ、つねに正義とともに立て!

1998.3.13 スピーチ(1998.3〜)(池田大作全集第89巻)

前後
17  ゾラが晩年に遭遇したのが、ドレフュス事件という、有名な″冤罪事件″である。
 何の罪もない人間が、軍部権力によってスパイ容疑をかけられ、遠島に流刑にされていた。事件の背景には、国民の″反ユダヤ感情″を悪用した策謀があった。
 ゾラは、黙っていることができなかった。齢六十近くになっていたが、彼は正義のために、敢然と立ち上がった。高齢にもかかわらず、「正義のために叫ぼう」と。
 叫べなくなってしまえば、人間、おしまいである。その人は、″心″が死んでいる。
 ちょうど今から百年前の一八九八年、彼は「オーロール(夜明け)」という新聞に、大統領への公開状を発表する。大きく印刷された見出しは「われ、弾劾す!」であった。大言論戦を展開したのである。
 この闘争宣言は、権力の弾圧を呼び起こした。ゾラ個人への中傷の嵐が巻き起こったのである。
 しかし、彼は動じなかった。くじけなかった。
 偉い人は動じない。ヨーロッパのことわざに「深い川は静かに流れる」と。また「臆病な犬ほど、よく吠える」という。ふだんは静かに、どっしりとしている人物ほど、いざ立ち上がったら、とことん戦い続ける。口先ばかり達者な人間は、いざというときに弱いものだ。
 迫害にも動ぜず、ゾラは叫び続けた。知識人に、庶民に、そして青年に訴え続けた。
 やがてゾラに応え、二十代を中心とした青年が、学生が、そして人々が立ち上がったのである。
 ゾラが訴え続けた努力は、事件の再審請求の署名として結実し、世論を高めていった。
 そして、ゾラの死の四年後、ドレフュスの無罪が確定した。歴史的な勝利であった。ゾラの勝利であった。この闘争は、「人権の王者」の闘争として、今も語り継がれている。
18  「新世紀の勝利」は諸君に託す
 信じられるのは青年である。年寄りの多くは、ずるく、臆病になり、要領ばかり使うようになる。
 戸田先生は、おっしゃっていた。「第三代会長は、青年部に渡す。牧口門下には、渡しません。なぜかといえば、老人だからです」と。
 私も、戸田先生と同じ気持ちである。二十一世紀は、青年に託す以外にない。(拍手)
 ゾラは、戦いを開始するにあたって、まっ先に、青年に呼びかけた。フランスの青年部が贈ってくださった本は、それを出版したものである。(『青年への手紙――ユマニテ〈人間性〉・真実・正義 ドレフュス事件に寄せて』一八九七年刊)
 ゾラは言う。
 「おお青年よ、若き君たちを待っている偉大な使命を思い出してくれ! 終焉を迎えつつある今世紀がもたらした『真実』と『正義』の課題を、来るべき新世紀が解決してくれるであろうと、我々は深く確信している。そして、この新世紀の土台を築くのは、若き君たちなのだ!」
 「青年よ、若き君たちよ! 常に正義とともに立て! 若き君たちの胸中から、正義が消えうせてしまえば、その行く末は、社会の破滅である。『正義』とは、単なる社会規範としての法律を言うのではない。むろん法律は守るべきだ。しかし、もっと崇高なる正義があることを、忘れないでくれたまえ!」(稲葉三千男『ドレフュス事件とエミール・ゾラ』創風社。以下、参照)
 私たちの精神も同じである。良き社会人として生きながら、妙法という最高の「正義」を広めきっていく。それが広宣流布である。「正義」の炎が胸中に燃えている人を「青年」と呼ぶ。
 ゾラは叫ぶ。
 「正義を証明するために立ち上がり、純粋な心と誠意をもって高らかに叫べるのは、若き君たち以外に、だれがいようか!」
 だれもいない。青年しかいない。
 「青年よ、若き君たちよ、我々とともに行動せよ。無実の人間が恐ろしい刑に処せられることを憤り、苦しみ、胸が裂かれる思いの我々とともに!」
 「この世のどこかに、『憎悪に押しつぶされんとする殉教者』がいることを知りながら、その人を弁護し、救い出そうという、ロマンあふれる夢を、青年よ、どうして抱こうとしないのか!」
 ″正義の人″が攻撃されている。それだけで、立ち上がるのは当然ではないか! との叫びである。それが「人間」である。それが「人間主義」である。人間を見くだす″権力の魔性″とは対極の精神である。
 「正義という理想を掲げ、この崇高なロマンに挑戦し、危険を冒し、偉大なる大義に身を投じゆくのは、若き君たち以外にないではないか! 勇敢な情熱をもってなすべき使命を、年配者たちの手にゆだねていることを、恥だと思わないのか!」
 「青年よ、いずこへ行かんとするか。若き学生よ、いずこへ向かおうというのか」
 「ユマニテ(人間性)、真実、正義の道を、ともに征こうではないか!」
 この言葉を、私は、そのまま諸君に贈る。(拍手)
19  青年ならば「攻撃精神」がなければならない。「破折精神」がなければならない。″拡大精神″がなければならない。
 形だけをつくろって、″事なかれ″でいくのは、ずるい″老青年″である。
 ともかく、いちばん大切なのは妙法である。その妙法を広めているのは創価学会である。
 ゆえに創価学会を守り、強くしていくことが、本当の民衆勝利になっていく。あらゆる戦いは、そこに焦点があり、目的がある。
 これを忘れずに、青年部諸君、全力で「大勝利」しましょう!(拍手)
 来年の「3・16」を心から楽しみにしつつ、皆さまのめざましい活躍に「ありがとう」と申し上げ、私の話を終わりたい。
 諸君の健康と活躍と成長を、私は朝な夕なに祈っていますから、安心して戦ってください。
 ありがとう!
 (創価国際友好会館)

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