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4・28「立宗の日」記念勤行会 今、世界は「人間の再生」を希求

1992.4.28 スピーチ(1992.1〜)(池田大作全集第80巻)

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10  コックス教授「二十一世紀の課題は人類に″心の飢餓″」
 先日(四月二十五日)、学術部主催のヒューマンクラブ講演会で、アメリカの名門ハーバード大学のハービー・コックス教授が講演してくださった。また、創価大学でも記念講演をされる予定とうかがっている。
 コックス教授は、世界的に著名な宗教学者である。昨年(一九九一年)九月、私がハーバード大学で行った講演(「ソフト・パワーの時代と哲学」)を聴かれ、光栄にも高く評価してくださった。また現在、私どもが推進する「創価ルネサンス」の運動にも、深い理解と共鳴の声を寄せておられる。
 コックス教授の演題は「二十一世紀の宗教の役割」。大切なテーマであり、ここで少々、その要旨を紹介しておきたい。
 教授は、講演をチェコスロバキアのハベル大統領の言葉で始めておられる。その言葉は、共産主義が崩壊した後の時代──二十一世紀(ポスト・モダン)の人類的課題に触れたものである。
 「共産主義体制は、非人間的抑圧によって人間に『物理的な死』を課した。しかし、その体制から解放された今、今度は、人々は消費文化や欲望のとりこになり、『精神的な死』という新たな危機に直面している」(要旨)と。
 こうした「精神の危機」の伝染力の前では、共産主義も資本主義も区別はない。「今やポスト・モダンの時代であり、この時こそ″精神のルネサンス″が必要である」との指摘であり、現代の″危機の本質″を突いていると私は思う。
 コックス教授は、ハーバード大学での私の講演に触れられ、「ハベル大統領と池田先生が訴えられたことは、まさに共通している」と述べておられる。
 (教授は、ハベル大統領と名誉会長のメッセージをこう要約している。
 「精神の牢獄から解き放たれた人々は、今、物質のおりの中に閉じ込められている。その解放のためには、精神の絶えざるルネサンスが必要である」(ハベル大統領)
 「そうした精神の飢餓、物質の虜にならないために、『精神の核』をつくる必要がある。内面的力の開花が待望されている」(名誉会長)
11  コックス教授は、さらに「今日の世界は、あまりにも(華やかな)外観、イメージ、見かけに満ちあふれている。人々もそのような傾向に流されて、本質的なものを見失い、表面的なものに愛着を持つようになっている」とも指摘しておられる。
 デパートの商品さながらに氾濫する「表面的なもの」の幻影にとらわれ、「本質的なもの」が見えなくなった時代──。教授の憂慮は、私もよくわかる。
 また、現代の消費社会においては、どんなに物を買っても、精神的には満たされることがなくなり、人間はあたかも″消費の機械″と化してしまうと。「貪欲どんよく奴隷どれい」になってしまえば、もはや真の「人間」ではないのである。その好例が日顕宗の僧である。
 ともあれ、大変な「精神の危機」である。教授は訴えておられる。
 「今、世界の人々は、政治や経済という表層的な問題だけではなく、精神の問題に耳を傾けるべきである」「売られている物には、精神的飢餓を満たすことはできない。精神の力の復興こそが必要である」
 全く同感である。
 そして、精神の復興のために、「宗教の力」──なかんずく「人々の内発的な力をき起こす仏教の役割に期待する」と。これが教授の講演での結論である。
 ″世界の良識″は、私どもの「精神闘争」に熱い期待を寄せている。
 ともあれ、「朗らかに」生き抜いていただきたい。「楽しい」毎日を、自分でつくり出していく人が賢者である。
 何があっても、前向きの方向に、愉快な方向に、信心を深める方向に、ものごとをとらえていける強さ、賢さ──その人が「幸福者」である。
 今回、中部でお会いできなかった方々に、くれぐれもよろしくお伝え願いたい。
 またお会いしましょう!

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