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日蓮大聖人・池田大作

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全国青年部幹部会 「自由なる精神」の人間復興運動を

1991.10.27 スピーチ(1991.10〜)(池田大作全集第79巻)

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17  ソフト・パワーへ広がる共感
 最後に、ハーバード大学で行った私の講演(一九九一年九月二十六日、テーマ「ソフト・パワーの時代と哲学──新たな日米関係を開くために」)に出席された同大学の教授の声を、聖教新聞のロサンゼルス特派員が伝えてきてくれたので、紹介しておきたい。
 アメリカ宗教学会の第一人者、ハービー・コックス教授は、次のように語っておられる。
 「今から百五十年前、エマーソンは、このハーバード大学で有名な講演を行っている。それは、伝統と権威を重んずる学問に対する警鐘を趣旨としたものであった。
 真の学問・知識とは、人間一人一人の内面から、そして実生活の体験から、ほとばしるものでなくてはならない。権威によって与えられたり、また権威によって支配されるべきものではない。
 池田SGI会長の講演は、″内なる精神″の意義を現代に蘇生させようとされたものであり、エマーソンの講演の真義をほうふつさせるものであった」と。エマーソンは、ご存じのように、ハーバード大学出身の、十九世紀アメリカを代表する詩人、思想家である。
 またコックス教授は、仏教をはじめ高等宗教の本来の在り方に言及されている。
 「精神について、″伝統性″と個人の″内面性″を対比すれば、一般に、宗教の指導者は権威をもって教えをれ、その権威に民衆を隷属れいぞくさせようとする傾向がある。しかし釈尊をはじめ高等宗教の始祖しそたちは、決して精神性の押しつけなどしてこなかったはずである。釈尊は″自らの体験を通して学べ、体験を深く内面化させよ″と弟子たちに説いたのではなかったか。そこには、精神の権威の行使など毛頭なかったはずである」と。
 「その後の宗教の権威者たちが、精神の権威をもって民衆を支配しようとするのは、まさに『ハード・パワー』の行使であり、始祖の精神とまったく逆行するものと言えよう」と。
 また、武力・財力というハード・パワーを背景とするローマ帝国の支配と戦ったキリスト教の歴史にふれつつ、ソフト・パワーとしての「精神の力」の重要性を述べられている。
 そして、「講演は、ハード・パワーに揺れ動く世界にあって、ソフト・パワーの意義を広く顕揚けんようしたものであり、『精神のルネサンス』の宣言として、大変、貴重なものであると評価している」と語っておられたという。
18  またノーベル化学賞を受賞されたダドリー・ハーシュバック教授は──。
 「講演をうかがい、イソップの『北風と太陽』の話を思い起こした。
 北風は、自分の力(ハード・パワー)で旅人のコートを脱がせようとする。つまり、権威にひざまずかせようとする。しかし旅人は固くコートのえりを閉じ、心を閉ざした。権威には屈しなかった。だが太陽は暖かな陽光(ソフト・パワー)により、旅人の心を自発的に開かせたのだ」
 「人間に限らず生物は、ハード・パワーを用いると本能的に心を閉じてしまう。すべてのしゅには、そうした本能がある」と。
 「だがソフト・パワーによれば、すべては本能的に協調のハーモニーを築いていく。SGI会長のソフト・パワーの提言に、すべての聴衆は強く反応した。私は多くの重要な講演に参加したが、これほど聴衆から強い積極的な反応を引き出したのを見たことがない」
 「SGI会長の呼びかけに対し、″そうだ、ソフト・パワーの時代だ″との強い響きが聴衆から返ってきた。私は、その反応を『心』と『心』の壮大なシンフォニーを聴くような喜びで受けとめた」と。
 そして、「人間の尊厳、人間の自由を何人なんぴとも奪い去ることはできないのだ、との人権の宣言を、その講演から深く聴き取り、私は、言い知れぬ希望と勇気に包まれた」と語っておられたという。
 ──このほかにも、多くの反響が寄せられている。もとより私個人への評価と言うよりも、仏法を基調とするSGIの理念と運動が、時代の先端を進んでいる、人類の幸福を開く正しい方向へと進んでいる、その一つの証左を後世にとどめゆく意味から、ありのままに紹介させていただいた。
19  歩こう!夢を大空にしきつめ
 先ほどの軽音楽部の皆さまの演奏は、大変に感動的な演奏であった。
 ソウル・ミュージックとは何か──。「ソウル」とは「魂」のことである。
 数百年もの間、不当な暴力に耐え、差別と闘ってきたアメリカ黒人の歴史。そのなかから、数々の文学や、ジャズなどの優れた音楽が生まれた。特に一九六〇年代、実質的な平等を求めた公民権運動のさなか、解放への「魂の叫び」として広く歌われはじめたのが、この「ソウル・ミュージック」である。
 先ほど演奏してくださった「いつか自由に」(サムデイ・ウィール・オール・ビー・フリー)も、権力の束縛に屈せず、自由に向かって前進する民衆の「魂の叫び」を美しく歌い上げた曲である(作者は、一九七〇年代を代表する作曲家ダニー・ハサウェイ)。
 この曲は、次のような内容であるとうかがった。
  鋭く見抜け、人の世の流転るてん
  時代の回転に振り落とされるな。
  世界の動きは速い。
  団結が固ければ、負けはしない。
  気高く歩き続けよう。
  こうべを上げ、胸を張り、夢を空いっぱいにきつめよう。
  偉大な歌を歌いながら、君は、どこまでも、どこまでも伸びていく。
  いつか皆、必ず自由になる。
 素晴らしいソウル音楽に感銘しました。熱演、本当にありがとう!
 本年も、残すところ二カ月。どうか有意義な一日一日で、立派に総仕上げしていただきたい。
 特に十二月(一日)の任用試験を受験される諸君の健闘を祈りたい。青年部は、「全員が教授に」を合言葉に進んでほしい。
 一万人を超える人々がいたというインド古代のある大学(ナーランダーの仏教大学)は、学生や教師はもとより、全員が優れた人格と一級の学徳を要求されていたと伝えられている。それと同じように、″全員が一級の広宣の闘士″″全員が社会の一流のリーダー″と誇りうる「創価学会」を、また「青年部」を、皆でつくっていただきたい。
 青年が動けば時代は動く。青年が立ち上がれば民衆は勝利できる。
 どうか明年の「創価ルネサンスの年」は、諸君の力で″すべてに勝利″の実証を堂々と示しきってほしいと念願し、本日の記念のスピーチとしたい。ありがとう!

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