Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

中部文化友好祭 「大いなる人間」の時代へ旭日は昇る

1991.10.20 スピーチ(1991.10〜)(池田大作全集第79巻)

前後
2  父子一体の″魂の継承″で偉業を
 また本日は、インド文化国際アカデミー理事長のロケッシュ・チャンドラ博士ご夫妻が出席されている。この席を借りてチャンドラ博士とお父さまについて、少々ご紹介したい。
 チャンドラ博士の父君・ラグヴィラ博士は語学に造詣が深く、特にサンスクリット語の世界的権威として知られ、インド文化の再発見のために尽くされた。父君はそのためにアジア各地を広く旅された。また、インドの独立運動のために身を投じた「知性」と「行動」の人であられた。
 第二次大戦中には敵国の日本語を教えていたという理由で、イギリス政府から親日派として投獄されている。また、ロシア語を教えていた時には、共産主義のスパイと疑われ、投獄された。混迷の時代であるほど、悪しき社会であるほど、時代変革の「先駆者」「正義の人」には、妬みの風と迫害の策動が襲いかかってくる。嵐の大きさが偉大さの証明なのである。
 ラグヴィラ博士は惜しくも一九六三年に事故で亡くなられたが、その波乱の人生にあって、徹して自身の「信念」に生き抜かれた。そして、その崇高なる精神を継いで立たれたのが子息のチャンドラ博士である。
3  ところで父君・ラグヴィラ博士は、インドの詩聖タゴールとも親しかった。タゴールは、ラグヴィラ博士の仕事を賛嘆していた。
 タゴールは自身の父(デベーンドラナート)のことを「ひとりの敬虔けいけんな魂」と呼び、心から尊敬していたというが、いま、ラグヴィラ博士の子息であるチャンドラ博士は父の夢を継ぎ、その実現へ進んでおられる。父君の創立した「インド文化国際アカデミー」の理事長として同アカデミーの平和・文化・教育の事業、なかんずく、人類の精神遺産の研究・宣揚に尽力されている。
 私にとっても、同アカデミーから栄えある「一九九〇年ラグヴィラ賞」を授与されたことは、生涯の誇りである。(仏教の最高峰・法華経の価値観を世界に宣揚した″ことをたたえ授賞)
 また、父君が発案した「シャタピタカ(百蔵)」シリーズ(インド・アジアの文学の集大成)の発刊も、現在で三百数十巻という大事業となっている。
 私は、こうしたチャンドラ博士のお姿に、高尚なる精神と不動の信念をともにする″偉大なる父と子の魂の継承″の劇を見る思いがする。「父子一体」の偉業のますますの発展を祈りたい。中部の若き諸君も、この博士の姿から何かを学んでいただきたい。
4  詩聖・タゴールの「大いなる人間の出現に勝利あれ」
 今年はインドの詩聖タゴールの没後五十周年──。タゴールは私の青春の愛読書であった。
 第二次世界大戦の暗い時代にあって、死を前に、タゴールは、高慢な、また無礼な旧勢力が瓦礫となって崩れゆくのをあちらこちらでの当たりにする。しかし、それでも彼は「人間」への信仰、大信頼の心だけは絶対に手放さなかった。
 詩聖の″創造と思索の生涯″の到達点──それはやはり「人間」であった。「人間」をこそ尊敬し、その聖なる内面を礼拝した。これは仏法の本来の精神にも通じる。
 大動乱が過ぎ去ったあとのすがすがしい大気のなか、「希望の旭日」が昇りゆくことをタゴールは確信していた。いつの日か、新しい「自由なる人間」の群像が出現し、失われた人類の遺産を取り戻すために、あらゆる障害を乗り越えて進んでくれるだろう、と。
 諸君こそ、その「新しい人間」であると確信する。
5  彼は、そうした「大いなる人間」の出現を歓迎する歌を残している。題して「最後のうた」。死の直前まで書かれた詩集である。その一編をご紹介したい。
  おお大いなる人間がやって来る──
  あたりいちめん
  地上では草という草がふるえる。
  天上には法螺貝ほらがいが鳴り響き、
  地上には勝利の太鼓がとどろく──
  大いなる生誕のよろこびの瞬間ときが来たのだ。
  今日暗き夜の要塞ようさいの門が
  こなごなに打ち破られた。
  日の出の山頂に新しい生命への希望をいだいて
  おそれるな怖れるなと、呼ばわる声がする。
  人間の出現に勝利あれかしと、
  広大な空に
  勝利の讃歌さんかがこだまする。
  (「最後のうた」森本達雄訳)
6  暗き夜のような″権威の門″″傲慢の門″″人間蔑視の門″は破られた。新しい自由な人間の出現に勝利あれ──。
 どこまでも「人間」である。大聖人の仏法も、その目的は「人間」の幸福である。
 どうか、中部の皆さま、そして私どもSGIは、この人間の勝利の賛歌を高らかに歌い続けていきましょう、と申し上げ、スピーチを終わります。きょうは本当におめでとう!

1
2