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日蓮大聖人・池田大作

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薬と生命力 希望、使命感、愉快な心が健康力

「健康対話」(池田大作全集第66巻)

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9  「心」が免疫力を高める
 池田 なるほど。では、こうした「治す力」を高めるためには、何が必要ですか。
 森田 やはり栄養でしょうか。戦後、日本人の平均寿命が飛躍的に延びたのは、一人一人の栄養状態がよくなり、「治す力」に大きく影響したからではないかと思います。
 上東 外部からの侵入者や体の中で生まれる異常な細胞に対し、体はつねに警戒を怠ることができません。ある程度の栄養状態が保たれていなければ、病気に対する抵抗力は弱くなります。つねに白血球を補充しなければならないからです。
 荻上 適度な量と栄養のバランスのとれた食事が大切だと思います。さらに加えると、十分な睡眠をとることも大切です。
 池田 逆に「治す力」を弱める要素は、どんなものがありますか
 上東 ストレスを続けて受けると免疫力は大きく低下します。
 ストレスが高じると、交感神経の働きが過剰になり、免疫をになう白血球の働きにも影響をあたえるのです。
 森田 だた、ストレスがすべて悪かというと、そうではありません。適度なストレスは人間に活力をあたえ、総体として免疫力を上げます。
 池田 いずれにせよ、「心」と、体が持つ「治す力」には深い関係がある。
 荻上 池田先生が対談集(『世界市民の対話』。本全集第14巻収録)を出されたノーマン・カズンズ博士は、″アメリカの良心″と言われたジャーナリストですが、「心身相関の医学」でも先駆的な研究を残していますね。
 池田 博士は、膠原病、心筋梗塞まど、たび重なる大病を克服された。その体験からも、人間の体が持つ「治す力」(治癒系)とともに、それを引き出す「精神の力」(信念系)に注目されていました。
 「希望」「強い期待」「生への意欲」などの前向きな感情は、人体の「治す力」を高めていくというのです。(N・カズンズ『人間の選択――自伝的覚え書き』松田銑訳、角川書店、引用・参照)
 荻上 看護師としての経験からも、そう思います。血液のがんの患者さんを担当していたときのことです。その婦人には、幼い、お嬢さんがいました。治療の関係で、お嬢さんとも自由に会うことはできなかったのですが、「娘が小学校に上がるときにはいっしょに入学式に行こう」と、目標を持ち続けていました。
 その結果、治療の効果も上がり、親子で入学式を元気に迎えることができました。
 池田 子どもの成長を見続けたいというお母さんの希望が、体の中の「治す力」を強めていったのでしようね。
 心は不思議である。心一つで大きく変わる。これは、紛れもない真実です。仏典にも心は巧みな画家のようなものである」(「華厳経」)とあります。
10  心と体は一体
 荻上 「責任感」「使命感」も、「治す力」を引き出す要因ではないでしょうか。
 私の母の例で恐縮なのですが、五年前、子宮がんになりました。
 池田 おいくつですか。
 荻上 現在、九十一歳です。高齢のため手術はできないと診断され、放射線治療を始めました。放射線治療は若い人でも体に負担がかかります。
 当時、母は、副看護部長で忙しい私にかわって家事を引き受けてくれていました。そのため母は「私が寝込んだら、この家は持たない」と(笑い)、入院中も週末には家に帰ってきて、家事を続けたのです。
 医師や看護師、他の患者さんもびっくりするほど元気で、治療も効を奏し、がんは治りました。現在まで再発もありません。
 池田 まさに″母は強し″ですね。たしかに何らかの仕事、使命の実現に励む人は、年齢にかかわらず強さがあります。
 古代ローマの哲人セネカも「仕事は高貴なる心の栄養なり」と言っている。「自分には、なすべき使命がある! 使命があるかぎり、倒れるはずがない!」――この確信がお母さまの生命力のもとになったのではないでしょうか。もちろん信心の力が根底にあったことは言うまでもありません。ほかに「治すカ」を強める心の働きはありますか。
 森田 「ユーモア」や「笑い」も、そうだと思います。
 「ユーモア」や「笑い」が、がん細胞の発生を監視するナチュラルキラ!(NK)細胞の働きを強めるという事実は有名です。
 上東 カズンズ博士も、「笑い」が「治す力」に優れた効果をもたらすとして、こんな研究を紹介しています。
 十人の学生に愉快な映画と、そうでない映画を十分ずつ見せたところ、愉快な映画を見たあとでは目立って、だ液中の免疫の働きが活発になったというのです。
 反対に、つまらない映画を見たあとには、そのような変化は見られなかった。(「ヘッド・ファースト――希望の生命学』上野圭一・片山陽子訳、春秋社、参照)
 池田 有名な実験です。カズンズ博士も「人体そのものこそ最良の薬屋(『笑いと治癒力』松田銑訳、岩波書店)と指摘されていた。これも生命に備わった「病気を治す力」を譬えたものでしょう。
 それは、人間の真の健康とは何かを示唆しているように思われる。
 日々、朗々たる唱題で生命力を増し、「希望」と「使命感」と「愉快な心」を持って、最高に充実した毎日を送っていきましょう。

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