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家庭看護 家族の連帯が最高の癒し

「健康対話」(池田大作全集第66巻)

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12  「心の回復」
 小島 「白樺」のHさんの体験を聞きました。Hさんのご主人は、髄膜炎で入院し、約一カ月間、意識のはっきりしない状態が続きました。やがて病状も落ち着き、幸いにも二カ月で退院することができました。
 退院後は、体力をつけるために、歩く練習をし、疲れたら無理せずに休むようにしていました。食事や着替え、入浴なども、不自由を感じさせないように、ご主人の希望を先回りして考え看護したそうです。
 池田 その点は、看護師さんだから心配ありませんね。
 小島 はい。ところが、体の回復とは反対に、将来や仕事への不安を日増しに口にするようになっていったんです。
 松本 心の回復は、医学的な知識だけでは、思うようにいかなかったわけですね。
 小島 そうです。そこでHさんは、今まで以上に、いたわりの言葉をかけるように心がけたそうです。「″人生八十年″という時代ですよ。まだ四十歳なんだから、今はゆっくり休んでください」と。
 地域の学会の方も激励してくれました。「必ずよくなるのだからあせらないことです」「人生に意味のないことは何もありません。貴重な体験をしましたね」
 周囲の励ましの積み重ねで、ご主人は元気をとりもどし、退院から約一カ月後に職場に復帰できたそうです。
13  追いつめない
 池田 あせらないことです。まわりの人も圧迫感をあたえないように、ゆったりと見守っていただきたい。「励まし」といっても、「早くよくなってください」と一方的に言うだけでは、かえって、追いつめてしまう場合がある。本人がいちばん「早くよくならなければ」と思って苦しんでいるわけですから。とくに、これまで挫折を味わったことがない人、全部、順調できた人は、病気になってふつうの人以上にあせるものです。
 また、ふだんは人に命令したり、指示をしている立場の人は、自分が病気で受け身の立場になって、神経的にまいる場合がある。屈辱感というか、みじめな気持ちに、なってしまう。
 稲光 本当に人の心はデリケートですね。
14  気持ちを理解
 池田 たとえば、我慢強い人は、自分の苦痛や不安を口に出せない。「心配ないから」と言って、「気分がいいふり」をする人もいます。
 小島 たしかに、そういう人は病気の回復が遅くなってしまいます。不安や苦痛を抑圧せずに、素直に口にできる相手が必要です。
 池田 そのほうが早く治るわけですからね。また周囲も、病人が不安を口にした場合、簡単に「大丈夫よ!」とか、「くよくよしないの!」とか、一笑に付さないで、よく聞いてあげることです。
 むしろ、「そうね。不安だよね。だからいっしょに頑張ろうね」と寄り添ってあげたほうが安心することもあるのです。
 松本 病院でも家庭でも、周囲が、そういう気持ちを、わかつてあげる必要がありますね。
 池田 そう。「自分の気持ちを知ってくれている」という安心がいちばん大事なことだと思う。病気の人の心は、いつも揺れ動いています。ちょっとした変化で一喜一憂したり、とかく悪い方向へと考えがちになります。
 健康な人には、ささいなことと思えることも、病気の人には気になることがあるのです。これは病気になったことのある人にしか、わからないかもしれない。
 ナイチンゲールも、「病人の神経は常に、あなたが徹夜したあとの神経と同じ状態にある」(前掲『ナイチンゲール著作集』1)と教えています。
 松本 そのとおりです。天井のシミが気になって眠れないという人もいます。9999
 小島 枕の高さやシーツの張り具合など、ささいなことが気になって、回復を遅らせることもあります。
 稲光 かなりストレスがたまりまずから、できれば、なるべく要望はかなえてあげたいですね。子どもの場合は、いつもより甘えさせてあげてほしいと思います。
 池田 「不安をあたえない」、そして「不安をとりのぞいてあげる」、また「安心と希望をあたえる」。これが、病気の人の生命力を高めるポイントですね。

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