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日蓮大聖人・池田大作

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ア卜ピー性皮膚炎 体質以外にも多様な要因

「健康対話」(池田大作全集第66巻)

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6  「叱る」より「励まし」を
 池田 アトピーの要因には「ストレス」もありましたね。
 豊福 はい。ストレスがたまると症状が悪化しやすくなります。たとえば、アトピーの中学・高校生は、受験のときに症状がひどくなります。しかし、進路が決まったりすると治ってしまう場合があります。
 森田 アトピーで大きなストレスになるのは、「かく」という行為です。かいている間は、気持ちがいいのですが、かいたあとは症状が悪化します。ですから「また、かいてしまった」と自分を責め、落ちこんでしまうのです。
 池田 「かいてはいけない」と再三、注意しているのに、子どもがかいている姿を見ると、親もストレスを感じてしまいますね。
 豊福 そうなんです。そとで「また、かいたのね」と叱ると、子どものストレスはいちだんとたまります。
 池田 またもや悪循環ですね。結局、家族全員がイライラしてくる。いずれにせよ、子どもを叱ったからといって、症状がよくなるわけではない。むしろ、お母さんやお父さんが薬を塗ってあげながら、「だんだん治していこうね」「大きくなれば、よくなるよ」と励ましていくことが大切ではないでしょうか。
7  皮膚は「心」と「生活」を映す鏡――ストレスから皮膚病になった阿闍世王
 池田 「皮膚は心の鏡」と言います。とてもデリケートなものです。アトピー性皮膚炎とは違いますが、釈尊時代の王で、有名な阿闍世王の話があります。王は、重い皮膚病に苦しみました。母親がいろいろな薬を塗りますが、ますます悪化するばかりです。阿闍世は母に、こう語ります。
 「このできものは、身の病ではなく、心の病だから、治せる人はいないでしょう」
 広く言えば、深刻なストレスでしょう。
 阿闍世は太子であったとき、悪人の提婆達多とつきあった。彼に、そそのかされて、釈尊や仏弟子を、ひどく迫害しました。また、父親の王を監禁し、王位について、ついに獄死させてしまった。そのことが、彼の心の中に後悔の念を生み、重い皮膚病となって現れたと言われています。
 涅槃経によれば、阿闍世の後悔の姿を見た釈尊は「月愛三昧」と呼ばれる境地に入ります。体から清涼な大光明を放ち、その光明で阿闍世を照らしました。すると皮膚病は癒えていった。阿闇世は、ふたたび釈尊に会うことによって、皮膚病の原因となった「心の病」を治すことができます。阿闍世王は、これからは釈尊の仏法を弘めていきますと誓うことによって、心身ともに健康になったのです。(『涅槃部』1、『国訳一切経印度撰述部』所収、大東出版社、参照)
 森田 ストレスに負けない、強い心が大切だと思います。また周囲の励ましが大事ですねアトピーも、決定的な治療法がないため、なかなか治らず、そのストレスから、ますます悪化する場合が考えられます。
 豊福 たしかに、「こうすれば大丈夫」という療法がないのが現状です。アトピーは、症状も原因も複雑で、多様なため、治療の方法も患者さん一人一人によって違ってくるのです。
 森田 民間療法を否定するわけではありませんが、むやみに、いろいろな療法を試すのは危険です。なかには、金もうけもあると聞きます。時間はかかるかもしれませんが、信頼できる医師と二人三脚で、根気よく、自分にあった治療法を見つけることがいちばん大切なのです。
 池田 あせりは禁物ですね。あせれば、ものごとを正確に見られなくなる。いたずらに不安を育てても、病気がよくなるわけでもない。かえって悪化させてしまうかもしれない。
 本人も家族も「時間とともに、だんだんよくなるんだ。よくしてみせる」と決めて、じっくりと治療を続けていってほしいと思います。

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