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日蓮大聖人・池田大作

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なぜいじめるの?  

「希望対話」(池田大作全集第65巻)

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14  中等部担当者 ありがとうございます。中学一年の一学期に、いじめが始まり、二学期はかなり学校を休みました。だから、成績も「がた落ち」でした。それで、二学期の成績表をもらって帰宅したとき、母に一言、「最低だ!」と言って、投げるようにして成績表を渡したんですね。そのときでした。すでに、このとき、親とはまったく話をしない状態だったのですが、母が私を呼びとめ、両手をとって、言ったのです。
 「お母さんはね、あなたが何も悪いことをしていないのに、いじめられているのは、つらいよ。でもね、あなたが、いじめる側でなくてよかった。人を傷つける側でなくてよかったと思っているよ……」
 母の目からは滝のように涙が流れていました。母は、さらに、こう言ったのです。「人を傷つけたことは、全部、自分に戻ってくる。いじめた相手の子も、いつか後悔するときが必ず来るよ。だから、その子の分まで祈ってあげられる自分になろうよ」
 母は必死でした。こんな母は見たことがありませんでした。
 でも、このとき、「生きる屍」のようになっていた私は、母の叫びさえ、体をすっと通り抜けていくような感じでした。
 こんなに母が真剣になってくれているのに……。でも、まわりのいっさいを、私の体が拒絶するのです。それほど、いじめが、私の体をマヒさせていたのです。
 池田 残酷だね。いじめは絶対に許せないね。
 中等部担当者 地獄の三年間がすぎて、中学卒業後は、いじめはなくなりました。
 高校では、パソコン関係の部活で部長もまかされ、高等部の会合にも出られるようになり、「人が変わったようだ」と言われました。中学時代の勉強の遅れがひどかったので、必死で勉強もし、大学ヘも進学しました。そのときも、高等部の友人や担当者の方には、ずいぶんと激励してもらいました。
 池田 すごい努力だったね。「何だって、取り返せないことはない」ことを証明してくれたね。
 中等部担当者 学生部になって、この仏法のすばらしさをだれかに伝えたいと決意して、ある友の幸せを御本尊様に真剣に祈っていたときのことです。
 「いじめをしている子の分まで祈ってあげようよ」という、数年前の母のあの言葉へ蘇ってきたのです。私は、熱いものが込み上げてきて、涙を止めることができませんでした。
 母が、あのとき、私に教えようとしていたのは、「人を思いやる心」だったのではないかと思ったのです。私は、あのころ、いじめにあって、親も、先生も、友だちも、何もかもが信じられなくなっていました。その渇ききった心に、母は「人を愛する心」を教えようとしたんだ、と。
 池田 そのとおりだ。そのとおりだよ。大人のなかに、その心がなくなっているから、「いじめ社会」になっている。
 その現実に、若い人たちは負けてはいけない。むしろ、君たちが変えてもらいたい。いや、君たちにしか変えられない。「今の社会はおかしい!」と気がついた君にしか、変えられない。君たちが、いじめなんかのない「新しい時代」をつくってもらいたい。
15  君だけの使命が必ずある!
 池田 日本だけじゃない。世界中に、悲惨な現実がある。私の師匠は、「この地球から『悲惨』の二字をなくしたい」と叫んだ。そのために、私も生きてきた。
 君たちも、世界のどこかで、君が来てくれるのを、ひたすら待っている人がいる。必ずいる。君でなければできない使命が、必ずある。そうでなければ、今ここに君が生まれてきてはいないはずだから。宇宙には、何一つ「むだなもの」はないのだから!
 しかし、「使命がある」ことと「使命を自覚する」こととは違う。自覚しないままに、自分をだめにする人が多いのです。
 だから、私は言いたい。君たちは、人に笑顔を贈るために生まれてきたんだ。君たちに、いじめなんか似合わない!

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