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日蓮大聖人・池田大作

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介護と支えあう心  

「第三の人生を語る」(池田大作全集第61巻)

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3  八十九歳で妻を介護、共に百歳めざし
 松岡 はい。庚さんが、なかさんの枕元で語りかけます。
 「今まで一生懸命、家のために頑張ってきてくれたのだから、申し訳ないなんて思わないでくれ。百歳まで生きて、二人で、きんさん、ぎんさんを超えょう」
 池田 八十九歳で奥さんを介護するご主人も偉いですね。
 仏法では、百二十歳まで生きられるとある。「百歳を超えて生きよう! これからだ!」という決心が、生命をリフレッシュさせ、若々しくする。
 佐々木 健康の秘訣をうかがいますと、庚さんが、三つの句を、詠んでくれました。
 「良き友が できて余生の 虹を見る」
 「上品に 着こなす老いの いいお酒落」
 「楽しくて 舌にころがす いい話」です。(笑い)
 松岡 嫁の幸子さんは、ダウン症の息子さんも抱え、介護の過労とストレスで一度倒れたこともありますが、義父母のいたわり励ましあう姿が支えになったと言われます。また、義母の「ママ、ありがとね」との一言があるから続くのです、と感謝されていました。
 佐々木 ご主人から「母もそう長くはないかもしれないから、いい思い出をつくってあげたい。苦労をかけると思うが、協力をしてほしい」と頭を下げられたそうです。それで、幸子さんもいよいよ肚を決めて、取り組まれたようです。
 松岡 市の福祉サービスも積極的に利用されており、デイ・サービスで週一回の入浴。月一度はショート・ステイも利用し、その間に介護の休息をとる。車イスやベッドは市からのレンタル。近所の義姉が手伝いにきてくれるようになり、ようやく安定したということです。
 池田 老いて、寝たきりや痴呆になったときこそ、それまでの生き方が表れるともいわれる。また、だからこそ、健康なときに夫婦の信頼の絆をいかに築いていくかが、大切になってくるのでしょうね。
 近藤さんのケースは理想的ですが、多くの場合、病院や施設が足りませんし、少子化が進んだ結果、支える家族も少ない。
 佐々木 いつ終わるかもしれない長年の介護に行き詰まり、心も体もズタズタになったり、家庭も仕事も犠牲にして介護している方もいます。
 池田 経験した人でなければ、そのたいへんさはわからない。介護している人を大切にして、みんなで支えていく。近所で、そういう家庭があれば、励まし、心をかけていきたい。
 介護経験をもつある学者が、これからは、高齢者介護を血縁者が担う社会から、志のある人のネットワークで支える社会にならざるをえないと述べていますが、同感です。
 この「血縁社会」から「志縁社会」へというのが、一つのキーワードですね。
 「志」で結ばれた社会とは、創価学会がめざし、実践してきた「地域広布」の建設そのものでもあります。
 松岡 志といえば、神奈川での世界青年平和音楽祭(一九九七年九月、世界五十一カ国・地域のSGIメンバーが出席して行われた音楽祭)では、先生と旧知の、オーストリアの声楽家のサイフェルトさんが熱唱されました。
 サイフェルトさんは、人のために働くという透徹した精神の持ち主です。「第三の人生」に大いなる示唆をあたえる、模範のような人ですね。
4  ″不滅のなにか″を求め、残せ
 池田 歌手であり、政府高官。哲学博士であり、良き家庭婦人。人生を、何倍にも生きている方です。
 お父さんは、盲目のコンサート歌手だった。お母さんも目が不自由だった。あえて父と同じ道ではなく、ウィーン大学に進み、哲学博士号を得て官庁に勤める。
 ところが父の死とともに、もう一度歌いたいという気持ちが込みあげ、家庭も仕事もやりきるなかで、十年のブランクを埋めていった。人の五倍は働いたと、さりげなく話されていました。そして、こう語っておられた。
 「人生は余りにも短い。″何か″を残さなければ。私を必要とする人のために尽くしたいのです。今日が、あるいは明日が、人生最後の日になるかもしれない。だから″不滅の何か″を求めているのです」
 私を必要とする人のために尽くしたい|――これこそ、牧口先生以来の学会の伝統精神です。

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