Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

創価中学・高等学校第27回入学式、関西… 「なぜ」と問い続ける好奇心を

1994.4.8 教育指針 創価学園(2)(池田大作全集第57巻)

前後
4  「きのうの自分」を乗り越えよ
 鄧女史が、「人民の幸福」のための運動に身を投じたのは、十五歳の時(1919年)。皆さんと同じ年代である。十五歳といえば、もう大人である。女史は立ちあがった。人民のために。自分のためではない。自分が偉ぶったり、楽をしたりするためではない。ただ人々のために、ただ社会のために――そこに本当の偉さがある。
 当時の中国は、日本をはじめ諸外国から侵略され、脅かされていた。国内にも、外国と結んで私腹を肥やす勢力があった。そのなかで彼女は、同志とともに、友人とともに、立ち上がる。有名な「五・四運動」である。胸中には、正義の炎、理想の炎が燃えていた。若者ならば、そうでなければならない。
 彼女は、雑誌に、火を噴くような一文を発表した。タイトルは「なぜ……?」。
 人々が苦しんでいるのに、同世代の友は、無関心をよそおっている。彼女は、こうした人々に、率直な疑間を投げかけたのである。女史は間う。
 ――なぜ、実行しないのか?
 一部の学生は、理屈はうまい。他人を批判するのは得意だ。しかし、行動すべき時に、みずから実行しない――と。
 彼女は聡明に見破っていた。口先だけの人間、格好だけの人間は、いざという時に逃げていく。結局、臆病であり、卑怯なのである。あてにならない。そうした人間に、歴史はつくれない。
 皆さんは、「行動の人」「勇気の人」「信念の人」に育っていただきたい。その人が立派なのである。テレビに出たり、有名になるのが偉いのではない。
 また、女史は、こう書いている。
 ――なぜ、嫉妬するのか?
 嫉妬は、自分の心を疲れさせるだけである。嫉妬の心には陰謀がともなう。他人が自分の前に行くのを恐れ、何とか他人の足を引っ張ろうとする。自分も他人も、ともに成長すればいいではないか。なぜ、嫉妬する必要があるのか――と。
 彼女は十五歳で本質を見ぬいていた。
 他人と自分を比較して一喜一憂するのは、愚かである。
 それよりも、「きのうよりきょう」「きょうより明日」へと、自分を高めていけばよいのである。
 学園は、うるわしい「人間性の園」であり、「城」である。暴力は、絶対に否定――これが、学園の永遠の伝統である。
 どうか、おたがいに心から励まし、尊敬しあう、”魂のスクラム”を築いていただきたい。限りなく続く後輩のためにも。
5  「人間」ならば「前へ!」「前へ!」
 女史は問いを続ける。
 ――なぜ、人を見くだすのか?
 人間は平等であり、助けあうものである。それなのに、多くの学生は、少しばかり学問があるからといって、自分は特別な人間だといばっている。学問のない貧しい庶民とは、かかわろうともしない。それどころか、あざ笑っている。
 私は問いたい。「何のため」に教育を受けているのか――と。
 「何のため」――校歌にこめられた学園の精神と同じである。
 「何のため」という、たしかな原点がある人は強い。この一点が定まっていれば、人生に迷わない。苦しくても、へこたれない。まっすぐに伸びていける。
 鄧女史は、みずからの青春の誓いのままに、人民のために、人民とともに、八十八歳の生涯を生きぬき、戦い続けた。(金鳳『鄧穎超伝』人民出版社を参照)
 皆さんも、ひとたび決めたわが理想を貫く、勇気ある人生を生きぬいてほしい。そのための原点を、この学園で築いていただきたい。(拍手)
 最後に、皆さんに、フランスの文豪ユゴーの言葉を贈りたい。
 ユゴーといえば、ブラスナー博士ご夫妻が寄贈してくださったすばらしいブロンズ像が、創価大学にある。トルストイ、ホイットマンの像も贈ってくださった。いずれも私が青春時代から愛読してきた文豪である。(=創価女子短期大学にはキュリー夫人の像を寄贈)
 さあ、前進しよう! ュゴーは呼びかける。
 ――人間の眼は、頭の後ろにはついていない。これは人間が、本来、前へ進むべきことを意味する――と。
 「わたしの考えは、いつも前進するということです」「つねに、夜明けのほうを、開花のほうを、誕生のほうを見ようではありませんか」(『九十三年』榊原晃三訳、潮出版社)。前進こそ、また進歩こそ、人間の証明である。一歩でも二歩でもよい。一ミリでもニミリでもよい。一日一日、かならず前ヘ進む。その人が「勝利の人」である。「栄光の人」である。
 冒頭に紹介した学園の先輩も、私がかつて揮豪して贈った「勝利者とは、前にむかって、最後まで努力しぬいた人の証である」という一言を励みに、がんばってきたと手紙につづってあった。
 どうか、これからの三年間、また六年間、「前へ、どこまでも前へ」を合言葉に、自分自身の黄金の歴史を創りあげていただきたい、と申し上げ、私のお祝いのスピーチを終わります。おめでとう!

1
4