Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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豊かということ  

「わたしの随想集」「私の人生随想」「きのう きょう」(池田大作全集第19…

前後
3  「便利」な交通機関の極致ともいうべき東海道新幹線では、東京から大阪まで三時間である。昔はここを五十三の宿場が結んでいた。忙しい現代人からすれば、道中に要する時間たるや、もったいないかぎりかもしれない。しかし、昔の人々とて道中を無駄に過ごしたわけではあるまい。駕篭に、あるいは馬の背に揺られながら、また杖を持って歩きながら、景色を楽しみ、人の世の変化相を見聞し、和歌や俳句をものした人も多かったにちがいない。新幹線に乗って旅を急ぐ現代人は、そこに何を見、何を創造しているであろうか。
 考えようによっては、一日は二十四時間、どんな乗り物を使って、どれだけ動きまわったとしても、これだけは変わりがない。いうなれば、どこにどうしていようとも、自己の「存在」だけは厳としてある。その自己をどう充実させるかが一日の充実につながり、ひいては、豊かな人生、社会をわが掌中にするかの鍵となるのではあるまいか。便利な環境自体が豊かなのではなく、その便利さをどう自己の人生の充実へと使いこなしていくかの知恵が、豊かさを形成するものだと思う。
4  私の周りにはいろいろな人がいる。同じ職場、同じような家庭をもっていても、豊かさは人それぞれに違う。質素な衣装を身につけていても、馥郁とした豊かさが滲みでている人もいる。豊かさが外形にあるのではなく、その人の内面の世界の深さと広がりにあるからなのだろう。「種子島」に驚き、「黒船」に眠りをさまされた日本人は、科学の進んだ西欧文化が豊かにみえ、不幸にも、それ以外に豊かさはないものと錯覚してしまったのであろう。その必然の結果として、繁栄だけを求めるアニマルに堕してしまったのかもしれない。
 豊かさとは、一つの物差しで計れるものではないと思う。多種多様に豊かさを把握する時代がきていることを、ノーカー運動は教えてくれているようだ。

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