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日蓮大聖人・池田大作

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虹を追い求めた革命児 鶴見祐輔『ナポレオン』

「若き日の読書」「続・若き日の読書」(池田大作全集第23巻)

前後
11  このように、ナポレオンの末路もまた坂道を転げ落ちていくがごときであった。信頼していた部下たちの裏切りにもあう。みずからの人生をふりかえり、彼はこうつぶやく。
 「名誉や、利害でつった戦友は、最後は、皆だめだ。理想と純愛とをもって、ひきつけた人々のみが、最後の味方でありうるのだ」
 真の友情こそ、かけがえのない宝である。とともに、人生最期が最も肝心である。飛行機もたとえそれまでいかに順調に飛行しようとも、最後の着陸を誤っては元も子もない。総決算のとき、いかなる一念を持ち得るのか。満足の心か、それとも悔恨の情か。この厳粛なる実相は、いかなる権力をもってしでも、財宝で飾りたてようとも、隠しょうもない事実なのである。
 若き日、私は「日記」にこう記した。
  ナポレオンは、戦勝した。次に、大敗、文戦勝。最後は、敗戦の英雄であった。
  ぺスタロッチは、五十年の人生の戦いは、完敗の如くであった。而し、最後は、遂に勝利の大教育者として飾った。
  今、自分は、どのように戦い、どのように終幕を飾るかが重大問題だ。
12  一八二一年、ナポレオンは遥か南大西洋の孤島で五十一年の波澗万丈の生涯を終える。最後の言葉は「フランス‥‥先頭‥‥軍」であったという。無意識のなかに、なおも万軍に号令をかけようとしたのだろうか。
 「それにしても、私の生涯は、何というロマン(小説)であろう」──このナポレオンの言葉どおり、英雄の生涯には、どこか人びとの心を打つ詩がある。

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