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日蓮大聖人・池田大作

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インドの未来を見つめる逸材 バジパイ外…  

「私の人物観」(池田大作全集第21巻)

前後
5  新外相の人柄を物語るものとして、こんなエピソードを耳にした。
 インドでは、パスポート業務が非能率的で、交付までに三、四か月かかったという。そこである日、外相は人知れず一般の申請者を装って、のろのろ業務の実態にふれてみた。窓口には何百人という申請者が長蛇の列をなし、二、三時間待たされた。やっと係官に渡航理由を説明し、書類の書き方を指示されると、改めて列の後ろに並び、再び二、三時間待たねばならない――。
 以来、旅券発行のシステムが改められたことはいうまでもない。今では一週間で交付されているという。
 週に一度はどこかへ出かけ、人びとと車座になって対話する、とも聞いた。そんな、大衆のなかに入り込んでいく行動に裏打ちされた思考の広さ、深さが、私との会談でも窺われたのだった。
6  「非暴力ということは、決して逃げるとか、臆病を意味するのではない。最も優れた人物こそ非暴力的であると思う」
 私の質問に答えて″非暴力″の思想は、ダルマ(法)の一部としてインドの生活法のなかに組み込まれている、とその根の深さを語る外相の言葉に、なぜ″非暴力″かについての説得力を感じざるをえなかった。
 会談のなかでは″純粋な非同盟″と近隣諸国との″善隣友好″の路線が明らかにされた。これも広い意味で非暴力主義から発するものであろうと思う。が、インド亜大陸をめぐる大国の複雑な駆け引きのなかでこれらの旗印を守り通すことは容易ではあるまい。
 話題は、アショーカ王や、宗教と人生との関わりにまでおよんで、楽しい語らいであった。
 そこには、ますます困難をきわめていくであろうインドの民の前途を担うがごとき生命の姿勢が感じられた。

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