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日蓮大聖人・池田大作

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EECの父 カレルギー博士  

「私の人物観」(池田大作全集第21巻)

前後
5  対談は、東京で三回、延べ十数時聞におよんだが、若い私を相手に、博士は少しも疲れをみせなかった。頭脳のきらめきも早く、楽しい語らいに、時の移るのを感じなかった。私たちの問題意識は、多くの点で、明らかに同じ方向をさしていたが、それらは『文明・西と東』(サンケイ新聞社)と題する一冊の本に収められている。
 博士は、青年時代から一つの信念に生涯を賭けた理想家である。その意味では、生涯青春の生き方であった。統合ヨーロッパに向かって歴史の巨歩が踏み出されるのを見届けた博士晩年の思想圏には、さらに、東西文明の交流を、新しい宗教の理念によって進めたい、との壮大な思いがあったようだ。
 一九七二年(昭和四十七年)七月のある日、「ヨーロッパを含む全世界を高揚させる、宗教的、普遍的な何かが必要だ。それは仏教しかない。自分の年でどこまでやれるかわからない。しかし、やらねばならない」と夫人に語っていたという。博士は、その旗を振ることはなかった。数日後に亡くなられている。
 十月の声を聞くと、私は、博士との出会いを思い出す。八年前も、十一年前も、お会いしたのは、十月だった。今は、スイスの、アルプスの山並みを背にする平和な村に、永眠されている。博士の熱い思いが、世界の恒久的な平和として実るまでには、なお時を貸さねばならないだろう。しかし、いつの時にか、その日は、招来させなければならない。
6  キキョウ色に澄み渡るスイスの空も、秋の気配を深めていることだろう。

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