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日蓮大聖人・池田大作

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冬のなかの青春  

「婦人抄」「創造家族」「生活の花束」(池田大作全集第20巻)

前後
5  生命の中にある財宝
 いくたびもこの「冬は必ず春となる」と考えているうちに、そこにこそ一つの人間として生きぬいていく根本姿勢というものを、確信しはじめたのです。宇宙の必然の運行のように、私たちの生活にも必ず春がめぐってこなければならない。では私たちは、自分たちの信仰修行がいったいどうなのか、深い反省のうちに、自らを厳しく裁きました。そして「冬は必ず春となる」という一節だけは、常に繰り返して叫びました。すると心に湧然たる希望が湧き、一切の愚痴を捨てることができたのです。
 人は、たとえどのような利口ものであったとしても、自らの意志の力だけでは、宇宙運行のリズムに乗ることはできません。コンピューター的知恵をもったとしても、事は人間の生命にかかわる問題であるからであります。宇宙の運行は、表面的には、力学的な説明で足りるように思われますが、もっと深い生命的な力に満ちているのです。その力のリズムは何によって生起するかといえば、宇宙生命の本然の力というよりほかありません。その本然の力に合致しようとする人間は、なにかしら、偉大な法則というものを見いだして人間自らの生命の働きを発現するほかはないのであります。人間の単独な意志では、人間の本然の生命を動かすことはできない。――たとえば、笑うにしても、怒るにしても、誰も笑おうと思って笑っているのでもないし、怒ろうと思って初めて怒るのでもありません。ある機縁に触れたとき、人間の生命は、意志の如何にかかわらず、おのずから自然に笑ったり、怒ったりしているのであります。
 ここに、私たちは目に見えない生命の働きを見、なんらかの機縁となる信仰の重大さを知るのです。宇宙生命との機縁、それは汝自身の生命の中にあると思うのです。ですから、生命の中にある財宝をあらわす信仰によって、宇宙生命の運行のリズムにいつとはしらず乗り、“冬は必ず春となる”という確実な体験を得ることができました。そして、知らずしらず逆行している人びとに、わが体験を語れる昨今となりました。
6  現代の危機にさいして
 今、問題になっている自然環境の破壊は、地球運行のリズムに対する大きな逆行といわなければなりません。ここ十数年の日本列島は、大々的な逆行を進めてしまいました。その結果、住民は自然からの復讐を受けなければならなくなりました。
 公害という人災にしても、現代文明の悪の悉くは、このような自然の運行、つまり宇宙生命の運行をまったく無視して成り立っていることにあるといってよいでしょう。行き詰まるのは当然のことです。冬から秋へと逆行しているのですから、このままに過ぎたら、いったいいつ春がくるというのでしょう。現代の危機は、見かけよりもはるかに根が深いのであります。現代の警告がここにあります。この緊急事態に処して、私たちの宗教運動も、いやでも燃え上がらざるをえないのです。
 私の青春は、いかにも冬のさなかにありました。しかし私の人生は春を呼ぶことができました。そしてその春は今もつづいております。
 今、若い皆さん方は、最近の事態に怯えながら、冬の襲来を予感しているにちがいないと思います。私の冬のなかの青春の体験が、なんらかの参考になるならば、それは私の望外の幸いです。
 日本列島も、今、冬です。季節も冬なら、生活環境もますます厳冬に向かおうとしております。宇宙生命に逆行してきたことの清算を、ここいらでつけねばなりません。私たち自身に春を呼び、日本列島にも、この地球にも、まことの春を呼ぶためには、何を根本としてなさなければならないか、すでにそれは私が改まって申し上げるまでもないでしょう。(昭和四十九年一月十三日「週刊明星」掲載)

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