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日蓮大聖人・池田大作

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悔いのない人生を  

「私はこう思う」「私の人生観」「私の提言」(池田大作全集第18巻)

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5  信頼といえば、太宰治の小説『走れメロス』を思い出します。
 メロスを信じて、生命を託したセリヌンティウス、そのセリヌンティウスの信頼に応えようと、生命をなげうって走りつづけたメロス。互いに信じあった友情の美しさ。人間の尊厳さ。読む人に、深い感動を呼び起こさずにはいません。私は、皆さんがこのような、どこまでも信じあえる友をもつなら、どれほど、この世の中が、美しくなるだろうと思わずにいられません。
 また、友情に関連して、異性との交際も、皆さんにとって無視することのできない問題であろうと思います。迷っている人も、少なからずいることと思います。私の気持ちを、率直にいえば、異性の友と、付き合うことを、なにか特別なことのように考える必要は、まったくない、ということです。
 ただし、それは、あくまで、中学生らしい清らかなものであってほしいと思います。家族の人にもきちんと紹介し、知ってもらい、だれにも恥ずかしくない、正々堂々とした交際であってほしいのです。自分らしい、明るい友情を育てるべきだと思います。マスコミなどに影響されて、大人のマネごとのような、背のびをした付き合いは、自分自身を傷つけるだけのことです。
 ですから、今、最も大事な仕事である、勉強だけは、しっかりしなければなりません。極端にいえば、もし、そのために成績が下がるようなことでもあれば、異性と交際する資格は、ないと考えるべきです。このことを心にとめて、あとは賢明に判断してほしいと思います。
 最後に、戦争と、平和の問題について、どうしても訴えておきたいことがあります。
 皆さんのなかには、映画やテレビで、戦争の場面を見てカッコいいなと思っている人もいるかもしれない。たしかに、映画や、テレビのシーンでは、スタジオやロケーションでつくられたものですから、実にカッコよく描かれています。
 しかし、本当の戦争というものは、そんなものではない。むごたらしくて、汚く、悲しいものです。その実際の場面を見た人なら、二度と戦争だけは起こしてはならないと、真剣に考えるにちがいありません。私も、そうした恐ろしい場面に、爆弾や焼夷弾が、雨のように降る空襲のなかで、いやというほどぶつかりました。
 火の海の中を、逃げまどう、みじめさ、恐ろしさ。別れ別れになった父や母、弟や妹のことも心配で狂いそうでした。多くの人が、バタバタ倒れ、死んでいくのを見ると、悲しく、くやしくてたまりませんでした。やっとの思いで、川から海岸のほうに逃げました。
 まして、今は、武器の破壊力も、第二次大戦の時より、はるかに強大になっております。かつての焼夷弾は、ナパーム弾になり、一発で直径数十メートルが、超高熱の火の海になるといわれています。もし、核兵器や毒ガス弾、細菌爆弾などが使われたら、かりにそのときはうまく逃れても、やがては悲惨な死にかたをしなければならないでしょう。
6  二度と戦争を起こしてはなりません。それは、私たちのような、本当の戦争の姿を知っているものの責任であるとともに、これからの世代の人々に残す、切実な願いでもあります。
 今の日本は、まだ、戦争の時に、あまり恐ろしい体験をしないですんだ人たちが、権力をもっています。政界も、財界も、指導権を握っているのは、明治生まれの人々です。だから、戦争など、なんでもないと思っている人もいるかもしれません。
 一方、若い人々も、もう二十五歳以下の人は、戦後になってから生まれたわけで、これは、はっきりと、戦争の恐ろしさを知らない世代ということになります。
 もしも、戦後生まれの青少年が、戦争をなんでもないという人々に、おだてられて、ふたたび日本が戦争にまきこまれるようなことがあったらたいへんです。しかも、実際に戦争をさせられるのは、青少年のみなさん方なのです。
 そのような、恐ろしい事態におちいらないために、戦争は、絶対にいやだ、という意識をもち、その意思を叫びきっていくことです。
 また、さらに一歩進めて、世界中に心の通いあう友だちをつくり、やがて、皆さんが、日本の、世界の、指導権を握った時代には、世界が一つの国のようになり、核兵器も、生物化学兵器もない、平和世界を、築いてほしいと思います。それには、英語や、フランス語、ドイツ語などの外国語を習得することも必要でしょう。また世界の文学や、風習について知ることも大切でしょう。
 ともあれ、皆さんは、日本という狭い枠の中に閉じこもるのでなく、国際人、世界人、地球人として育っていってください。
 本当の世界平和は、政治家同士が、結ぶ条約、経済人同士の提携によって、もたらされるのではなく、生命と生命との間に結ばれた、信頼の絆によってこそ、実現されるものです。

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