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日蓮大聖人・池田大作

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1 環境破壊に対して―略奪さ…  

「21世紀への人間と哲学」デルボラフ(池田大作全集第13巻)

前後
18  デルボラフ 工業化の影響で、一九五〇年から七五年までのあいだに、原料としての木材の需要が二倍になっています。四五年以降、森林保有面積はラテン・アメリカで三七%、アフリカで五〇%、アジアで四〇%ほど減少しており、発展途上国ではいまなお森林を焼いて、開墾がつづけられています。
 工業化と人口増加は、水の使用量を膨大に高め、開墾地の不毛化の傾向をさらに促進しています。土地への需要が高まっている時代には、耕地面積はふえるどころか、むしろ逆で、人口密度の高い国々では、かえって荒れ地がふえています。
 このことから「原始林開墾は農業経済に新たな耕地を提供する」という主張は、人を惑わすものであり、端的にいえば誤りであることがわかります。事実、森林の伐採は地面をたちまち砂地にしてしまい、大きな風土の変化をもたらすことはたしかです。それにくわえて、工業国では何年もまえから、原因不明の森林の衰弱現象が見られます。西ドイツでは、森林面積が増加してはいますが、森林をもっとも必要とする人口密集地帯ではふえていません。森林保護の決定要因とされているのは、林業の収益性であって、落葉樹林にくらべて収益性の高いドイツトウヒの林が優先され、それが森林面積増大の中核になっているわけです。森林破壊は、そのドイツトウヒの森林にとくに顕著にあらわれており、瀕死の状態を呈しているのです。
 したがって、緊急になすべきことは、現存の森林を、自然保護規定とか、少なくとも理性的利用条件をもうけて、そのもとに管理し、被害を受けている森林――「黒い森」や「ウィーンの森」については、適切な保護措置をとることでしょう。とうぜん、大規模工業の利潤追求の商業主義に歯止めをかけ、国際レベルで空気汚染の元凶を阻止することが必要です。それがいかにむずかしいかは、現在、西ドイツで議論されているEC(欧州共同体)での自動車排気ガス規制の導入ひとつをとってもわかります。しかし、それができないかぎり、こうした目標設定は、むなしい願望に終わってしまうでしょう。
19  池田 日本でも、かつてさまざまな落葉樹や常緑樹が混在していた原生林が切りひらかれて、収益性の高い杉や桧が植えられました。しかし、杉や桧は根の張り方が浅いため、台風やそれにともなう豪雨に弱く、山崩れがおきやすかったり、また、病虫害におかされるなど、そのもろさが露呈されて、植林政策に反省の声が出てきているようです。
 人間社会が、多様な人々の相互協力、相互補助によって成り立つように、一つの森林も、さらには自然環境全体が、多様な要素の有機的結合によって織りなされているのです。こうした自然の健全ないとなみを総合的に見つめ、保護策を推進していくことが、なによりも望まれる点であると思います。
20  伏羲
 中国古伝説の中の帝王。三皇の一人。人首蛇身とされる。文字、婚姻の礼を定めるなど基本的な人間生活のいとなみを制度化したという。
 神農
 三皇の一人。炎帝とも。牛首人身と伝えられる。人類に農業や医薬の道を開いたとされる。
 黄帝
 三皇五帝の一人。天下を統一し、度量衡を定めるなど諸制度を確立したという。
 プロメテウス
 ギリシャの神。水と泥から人間をつくり、動物のもつ全能力を付与したという。また天上の火を人間にあたえ「文化」をもたらしたとされる。
 ゼウス
 ギリシャの主神としてオリンポス宮殿に君臨。天空を支配し、政治、法律、道徳など人間生活をも支配するとされる。ローマ神話ではジュピターにあたる。
 オイゲン・ドレーヴァーマン
 (一九四〇年―)ドイツのカトリック神学者。精神分析の立場から伝統的キリスト教教義や教会制度を批判したため、大学での講義や教会での説教を禁止され停職処分を受けた。

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