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日蓮大聖人・池田大作

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3 自然の保護  

「21世紀への人間と哲学」デルボラフ(池田大作全集第13巻)

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4  デルボラフ さらにいえば、伐採という破壊的横暴は規制することができますが、かんたんに抑止できないのが、環境汚染という言葉で呼ばれている、産業経済による間接的な破壊作用です。工場廃水による河川や湖沼の汚染と魔力にかかったような森の瀕死――これらは広大な土壌の破壊を誘発しかねません。
 こうした問題は、無鉛ガソリンの強制導入とか、工業用有毒物の処理に対するきびしい規制などの個別措置をとったとしても、せいぜいその進行を緩和するだけで食い止めるにはいたらないでしょうし、ましてや、もとの状態にもどすことはできません。
 被害の原因がすべて確認され、明るみに出されているわけでもありません。たとえ原因がわかっていたとしても、市場経済の秩序をみだすような介入は社会的に好ましからぬ影響をもたらすという理由から、こうした破壊作用への対応措置は容易に実施されないでしょう。環境保護に対する負担があまりに高すぎると、資本の面で弱い体質をもつ多くの企業では、死活問題ともなりかねません。その場合は、失業者数がさらに増大してしまうことはさけられません。
 環境汚染に対して断固たる態度で対応しなければならない、という点では皆、意見が一致しているのですが、そうした処置からひきおこされる経済的・政治的マイナス面に対しては、だれも責任をとろうとせず、結局、自分自身のジレンマを乗り越えられないままでいるのです。われわれ自身がこうした状況のなかに埋没しているのですから、発展途上国の人々がなんとか近代的たろうと努力するなかで、彼らの国土の天然資源を危機におとしいれてしまうような事態を防いであげることは、なおさら困難です。
 そこで、彼らは、われわれの失敗例を参考にできるだけということになりますが、結局、他国民と同じ失敗をくりかえすことは、どの国民もさけられないのではないかと思います。
5  池田 今日、自然保護ということで問題にされるのは、いま言われた開発途上国の自然破壊です。これらの途上国は、自然をいまも多く残している国だからです。言いかえれば、すでに開発された先進諸国は、ずっと昔に自然を破壊してしまった国であるということです。
 ブラジルの大密林地帯をはじめ、いま、地球上に残された自然が地上における貴重な酸素あるからといって、ブラジルの経済開発を強制的に抑止することはできません。大密林をなるべく保存しながら経済的発展をはかるにはどうすればよいか、またブラジル等でやむなく破壊された緑の資源を他の地域でどのようにしておぎなうか――そうした総合的見地からの取り組みが早急に開始されなければならない、と私は考えます。

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