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日蓮大聖人・池田大作

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第十章 太陽の誕生、人生と宇…  

「宇宙と仏法を語る」(池田大作全集第10巻)

前後
11  星の死にゆく姿は
 ―― さて、初めにお話の出た何十億年も経て誕生した太陽や地球のような星も、またいつかは崩壊・消滅していくわけですが、具体的にはどうなるのですか。
 木口 星には、冷たくなって小さくなるものと、死んで宇宙に溶けこんでいく星とがあります。
 池田 どうしてそのような違いが出てくるのですか。
 木口 それは、星の大きさによります。簡単に説明しますと、太陽より小さい星は、だんだんと小さく冷たくなっていきます。これを「白色矮星」といいます。
 ―― なるほど。
 木口 太陽より大きな星の場合は、その星の死が近づくと、自身の形を保っていることができず、大きくなったり小さくなったりしながら、最後には大爆発をおこして宇宙に溶けこんでいきます。
 池田 最後は爆発ですか。爆発しないで崩壊するものはありますか。また、爆発して木端微塵になるものもあるのでしょうが、そのなかから残る物体もあるわけでしょう。
 木口 ええ、爆発してなおかつ星の中心部分が残っているものもあります。
 これは、「中性子星」といわれるものです。
 この「中性子星」が、私のいちばん好きなテーマで、これまでも関心をもって研究してきました。
 天文学会でも発表したことがあります。ただこれも最終的には、つまり1の後ろにゼロが兆×兆個ついた年の後には、宇宙に溶けこむといわれています。
 池田 なるほど。そうしますと、星の死は太陽の大きさが基準となって、違いが出てくるわけですか。
 木口 そのとおりです。
 池田 それは宇宙のどこでも、あてはまるわけですか。
 木口 ええ、まことに不思議なことですが、太陽は宇宙の平均的な基準の星なのです。
 池田 やっぱり、王者ですね。王者は常に輝いていなければならない。(笑い)
 ―― 星の死を研究するのは、「量子力学」の分野ですか。
 木口 おっしゃるとおりで、星の死の姿をとらえ研究するのに最も適した学問ですね。
 ―― そうですか。どのような研究になるわけですか。
 木口 私の研究は、星が生から死にいたるまでの素粒子や原子や分子の運動、またその変化をさぐることです。これは紙と鉛筆と、電子計算機を多少使うだけで、本当にお金のかからないものです。(笑い)
 池田 それは、結構なことですね。(笑い)そうしますと、この「量子力学」とは、いわば目に見えない分子や原子や素粒子などの、微小の物質をとおして「星の死」を解く学問である、と認識してよいですか。
12  中性子星のナゾが解明
 木口 そのとおりです。少々むずかしい言い方になりますが、広大無辺なる宇宙は永遠の時間と、無限の空間によって成り立っています。
 この時間、空間という縦横の広がりのなかに、死んだ星の物質が、どのように溶けこんでいくかを記述するのが「量子力学」です。
 ―― 物質が溶けこんでいく宇宙というのは、「物質の死の世界」ということですか。
 木口 そうです。死の世界ですから、ふつうは見ることも感じることもできません。
 池田 わかりやすく言うと、「量子力学」とは、いわば目に見えない物質世界を探究するアンテナのような役目をする学問ということですか。
 木口 そうです。さきほどの中性子星というのは、「量子力学」により死の世界の働きというものがはっきりわかる星です。
 ―― どういうふうにですか。
 木口 大ざっぱに言いますと、中性子星は爆発して死んだ星が残した燃えカスということになります。
 この星はなんの輝きもなく、なんのエネルギー源もありません。
 星が星でいられるのは、熱エネルギーによる外向きの圧力があるからです。ちょうど風船に空気がつまっているようなものです。
 ―― なるほど。
 木口 ですから、もし星に熱エネルギーがなければ、星は重力にさからうことができずに、大きさのない一点にまで縮んでしまい、われわれの感覚ではとらえられなくなるはずです。
 ところが現実に、エネルギー源のない中性子星が、大きさのある星の姿を残したまま宇宙に存在していることが観測されています。空気もないのに、風船がふくらんでいるわけです。
 これは一九三〇年ぐらいまで、なんの解明の手がかりもないナゾでした。
 ―― おもしろいことがあるものですね。
 木口 このこと自体、宇宙に遍満している、物理的な実体のない不思議な力、つまり死の世界からの働きによると考える以外ないわけです。
 これが、「量子力学」の効果として計算できます。
 池田 なるほど。その次元は別として、われわれの肉体が死んでも生命自体の境涯、つまり「我」というものは存在する、ということに相通ずる気がしますね。
 木口 ええ、これらをみても物質の死の世界が、われわれの目に見える実際の現象世界に、その働きがあらわれることがはっきりとわかります。
 こうしたことを、ロンドン大学の有名な物理学者ポール・デイヴィスは、「われわれの世界と並行して存在する別の世界の幽霊が、われわれの世界の物質をつき動かしている」と、まことに興味ぶかい表現をしています。
13  期待される「量子力学」の進歩
 池田 まえにも申し上げましたが、仏法では「妙は死法は生なり」という法理があります。「妙」すなわち、目には見えない根源の力が、「法」すなわち、目に見える現象世界を動かしていく、という意義になりましょうか。
 ですからいまのお話は、いわば科学の最先端の考え方でしょうが、そうした観点からみると、たしかに「妙は死」、「法は生」という法理が理解できますね。
 木口 「量子力学」の発達は、いままで人間が信ずることもできなかったことを証明しています。
 ―― なるほど。
 池田 御文に「法界は妙法なり」とあります。
 日蓮大聖人の仏法の基盤は、妙法、つまり宇宙の根源法の当体に唱題すれば、大宇宙の国土、衆生、生命というものに、すべて祈りが通ずるということになっております。
 ―― すごい法理です。想像もつかない。
 池田 また「妙の文字は月なり日なり星なりかがみなり」という御文もあります。
 妙法の力用は、銀河系にも、何億光年のさきまでも、じつは通じていくものである、とおっしゃっているわけです。
 ―― 雪山童子が生命を捨てようとしてまで、願求したという理由もわかるような気がします。
 池田 それは、いわゆる通途の仏法での修行の段階です。
 いわんや、大聖人の文底下種独一本門の仏法たる「南無妙法蓮華経」は、法界すなわち、大宇宙へ通ずる大法であると明かされているわけです。
 木口 とうてい観念だけでは理解もおよびませんが、いつもながら仏法は、甚深の哲理と思いますね。
 ―― ところで、イギリスに『ネイチュア』という週刊の科学雑誌があります。この雑誌の編集長がこの夏(一九八三年)、「日本の科学技術特集号」の取材で来日しました。
 木口 そうでしたね。『ネイチュア』の創刊(一八六九年)には、進化論のダーウィンも関係していますし、この雑誌に研究論文が載るのがノーベル賞への近道といわれています。
 池田 この記者会見のもようは、たしか新聞にも載っていましたね。「今後おもしろくなりそうなのは量子力学で、花形になるだろう」というような話であったと思いますが……。
 ―― ええ、量子力学の分野から、「物理的世界の根本に関するエキサイティングな発見が出てくる可能性がある」と、科学界の今後の展望を強調していたのが印象的でした。
 木口 私も、まったくそう思います。
 こんどノーベル賞を受けたアメリカのチャンドラセカール博士(インド生まれ、シカゴ大学教授。星、宇宙の生成、進化を研究)も、天文学に量子力学をもちこみ、白色矮星を予言した功績に対して与えられています。
 量子力学というのは一面、哲学に近い科学ということもできます。
 ですから、この学問の進歩は、人間の価値観を大転換させる可能性があるといわれています。

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