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核融合研究と国際協力  

「第三の虹の橋」アナトーリ・A・ログノフ(池田大作全集第7巻)

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8  ログノフ 今や、エネルギー問題の現実的な解決法たりうるのは、核エネルギーだけだといえます。人類に必要なエネルギー総量のほぼ半分は原子炉から得られるエネルギーによってまかなわれるであろうことが確かであり、学者は核融合反応を、将来性のあるエネルギー源の一つと考えています。
 制御された核融合の研究が始まったのは一九四〇年代の終わりから一九五〇年代の初めにかけてでした。つまり、ウラニウムを核分裂させてエネルギーを受け取る分野で最初の成果が得られた直後のことです。当時、ソ連では制御された核反応の開発は可能だという考えが表明されました。アカデミー会員I・V・クルチャートフ博士の指導のもと、この面での実験的研究が始まりました。研究作業の初期の段階で核融合エネルギーの開発は短時日で克服できることが明らかになりました。
 同時に、学者たちは一連の困難にぶつかりました。まず第一に、高温プラズマ物理学を発展させるためには予想以上に手間がかかるということです。この課題を解決するためには世界中の学者の努力を結集する必要があることがわかりました。これに関連して、一九五六年にソ連国内で、つづいて他の国々で制御された核融合の研究上の秘密が解かれ、それ以来、多くの国の学者による共同研究が行われるようになりました。
9  こうした協力は、たんに問題解決への近道が見いだせるだけでなく、人類のためのエネルギーの平和利用にも寄与することになるというあなたのご意見に完全に同意します。一九五七年、国連に設置されたIAEA(国際原子力機関)の規約はそのような目的の達成をうたっています。IAEAは設立以来三十年の年月の間に原子力平和利用の面で大きな成果を成し遂げました。IAEA加盟諸国が進めている広範な研究プログラムは、原子力発電の発展、情報の交換、環境保全、新エネルギー源の開発等に寄与しています。
 チェルノブイリ原子力発電所の事故が示したように、この事故の処理において多くの国の努力を一つにまとめる中核となって活動したのは、他でもないIAEAでしたし、事故の処理と関連して、ゴルバチョフ党中央委書記長がソビエトテレビで放送し(一九八六年五月十四日)、核エネルギー開発での安全性を高める国際システムを提唱したことも広く知られているところです。
 この提唱は、一九八六年九月二十四日から二十六日にかけてウィーンで開かれたIAEA総会特別会議で検討されたソビエト案の基礎づけをしました。討議の結果、総会特別会議は、「核による事故の緊急通報」と「核による事故あるいは放射能事故に際しての援助」に関する二つの協定を採択しました。
10  現在の情勢にあって軍拡競争の停止以上に差し迫った課題はありません。IAEAの枠内でもこの方面で多くのことをしております。
 IAEAの任務の一つに分裂性物質、設備や技術手段など、同機関が保有する資料を軍事目的の推進に用いることを許さないという保障があります。この保障を果たすことこそ、核エネルギー論が活発化している今日、第一義的な課題にならなければなりません。IAEAの枠内でも個々の国の間の二国間協定や国家集団間の協定が存在しています。なかんずく、ソ連原子力国家委員会とフランス原子力委員会との間に核物理学分野で共同研究を実施するという協定が結ばれ、核融合やプラズマ物理学を含むさまざまな協力が進められています。同じような協定がアメリカ、日本その他の国との間でも結ばれました。経済相互援助会議(コメコン)の枠内でもソ連と社会主義諸国との間で原子力の平和利用に関する共同研究が進められています。
 高温プラズマ物理学の当面の課題や技術・工学上の問題を審議する各種国際会議、シンポジウムを開催することは、核融合分野での国際協力を実り多いものにするのに寄与するでしょう。

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