Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

科学の発達と世界観  

「第三の虹の橋」アナトーリ・A・ログノフ(池田大作全集第7巻)

前後
11  以上述べたことのすべては、学者に対して、発明や開発の成果を活用するさいの道義的責任の問題を提起し、良心的な研究者に向かって市民的立場を訴えています。換言しますと、世界的性格の問題に私たちの注意をうながしているのです。
 もちろん、今日の世界観は一枚岩ではありません。すなわち、世界観的目標は、時として、海洋や国境以上に人々を引き離しています。それは当然でしょう。世界観というのは、人間教育の過程で、現代文化の影響を受けながら形成されていきます。一方、現代文化は、科学やその成果の利用、科学的な大学教育や宗教的な伝道、人々が接触する過程で生まれる国際主義や他国民への敬意、そして、時に人種的憎悪をもたらす狭隘なナショナリズムといったものをすべて包含しています。
 そして、それを認めることがいかに悲しいことであろうと、歴史は、人間愛の思想だけでなく、人間憎悪の思想をも大衆行動の指針にしうることを立証しています。一定の哲学に立脚したファシズムの思想がその確証です。この哲学は理念的になんら豊かな内容ももたず、ただ世界支配のみをめざすという、劣悪きわまるファシズムの目的に似合ったものでした。第二次世界大戦によって世界の諸国民がこうむった無数の災厄がその結果だったのです。
12  ところが、今日、ネオ・ファシズムのイデオロギーを奉ずる人々がいます。このことは、哲学の進歩と人々の世界観形成にかかわる問題への取り組み方がいかに重大かを物語っています。このことに関連して、一部の国で宣伝され、奨励されている民族主義と人種的偏見は大きな危険をはらんでいます。ファシズムがつねにこの種の思想から出発したことを思い起こすだけで十分でしょう。侵略目的を“正当化”するためにはまず人種差別の思想を人々に植えつけなければならなかったのです。
 あなたは現代の世界観がどのようなものでなければならないかを問うておられます。
 なによりもまず、あなたは、人間をみずからの運命の主人公と宣言し、人間相互、諸国民相互の不信を取り除くことができるような新しい思想体系をつくりあげなければならないと情熱的に訴えておられますが、そのご主張に私は完全に同意します。同時に、そうしたヒューマニズムの理想を実現するための現実的な方途を探し求めなければならないことも論をまちません。
13  現代の要請に応える世界観は、現実を科学的に研究するプロセスのなかで取得できる知識をよりどころにしなければならないと思います。私どもはこの課題を、弁証法唯物論的な世界観を構築し、発展させる途上において順調に解決しつつあります。この世界観は、さまざまな国民に固有の文化的・民族的伝統を考慮に入れながら、歴史的発展における一切の人間活動の自然的・社会的現実を科学的に認識し、哲学的に把握することを前提としております。このような知識なしに人間は、自分が直面する諸困難に対処することはおそらくできないでしょう。言い換えますと、現代の世界観は、人類を今日の危機的状況から救い出し、将来ともそのような事態を許さないための人間行為の組織化を助けるよう使命づけられているのです。

1
11