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日蓮大聖人・池田大作

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宇宙の構造・進化とその始源  

「第三の虹の橋」アナトーリ・A・ログノフ(池田大作全集第7巻)

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6  宇宙進化の最初期の段階についての知識はあまり正確なものではありませんが、それはやむを得ないでしょう。しかし、私たちが確実に知っていることを顕微鏡物理学や相対論的引力原理の一定の法則によって補足的に過去に書き入れることによって物理的諸条件が引き出されます。それらの条件についての知識は観測によってチェックすることができるでしょう。温度が十億度に達し、物質と放射の平均密度が一立方センチメートルの体積中十の二乗グラムだった時代についての観測報告書が今日存在しています。
 その時代に核融合反応が起こり、その結果、水素、ヘリウム、重水素といった軽い元素の核が形成されたのです。それらの元素が宇宙空間に拡散している事実は、理論モデルの予測と合致しています。
 さらに高い密度と温度の場合、観測可能な宇宙が物質をもっているのに、反物質をもたないのはなぜかを探求する必要があるでしょう。宇宙科学と理論物理学の最新学説との深いかかわりがそこから始まるわけです。
 観測される宇宙の膨張は縮小と交代するのか、また、この宇宙は無限につづくのかという問いに対する答えは、宇宙空間における全物質の最大密度いかんにかかっています。現在はまだ見えない物質の平均密度は、引力が最終的に膨張と縮小の交代をもたらすのに十分な大きさをもっているとも考えられます。
7  私どもには、星や銀河といった多くの天体の始源はかなり明確にわかっていますが、宇宙そのものの始源については、解明の道をやっと一歩踏みだしたばかりといえます。
 現在の理論モデルから引き出される諸結論によって過去の事実を推定しても、そこに引き出される密度や温度などの特性の形式的な値は無限です。しかし現在はまだ完成されていない未来の基礎理論では、エネルギー論的、空間的・時間的等の物理学的実在の一切の特性をつくりあげた物理的過程が明らかにされると考えられます。
 その意味で、この理論は観測される宇宙の始源についての知識を、さらに、銀河と類似した、あるいは、いちじるしく異なる他の「宇宙」の限られたものの始源についての知識を私たちに与えてくれるかもしれません。
 私たちの宇宙学では、「私たち」の宇宙は当然開かれたものになっています。したがって、宇宙全体には「隠された質量」が当然あるわけで、それは、今日観察される質量の約四十倍に達すると思われます。
 「変動」、そして「膨張」過程を始める摂動が発生する物質形態は従来「真空」、すなわち「空虚」と呼ばれてきました。しかし、現代の「物理的真空」は空っぽではなく、本質的には――ただ現在においてはの話ですが――私たちの科学の領域に含められているもののうち最も基礎的な、物質存在の形態なのです。ただ、今のところはまだその解明は十分ではありません。

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