Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

時間と空間  

「第三の虹の橋」アナトーリ・A・ログノフ(池田大作全集第7巻)

前後
8  しかし、この方面で得られた結果は、非ユークリッド空間によって力学を体系づけることができるということを立証しました。しかし、当時出現した非ユークリッド幾何学は、アインシュタインの相対性理論が現れるまで物理学者によって真剣に論議されず放置されました。
 物理学者にとって空間はユークリッド空間、つまり時間に関係のないものとしてとどまりました。したがって上に述べた二つの変換群――ガリレイの変換群と、空間の均質性と等方性および時間の均質性を反映する変換群――はそれぞれ独立して共存しました。
 さて、思いがけない発見が電気力学によって得られました。マクスウェルやファラデーの電気力学が生まれたのち、ニュートン力学を源とする空間と時間の本性は電気によって結論づけられる本性と一致しないことが明らかになりました。精密な研究の末、電気力学が時空の本性を正しく反映しており、近似的な性格のニュートン力学は新しい相対力学に代わらなければならないことが結論づけられました。こうして一九〇四年に例のローレンツ変換の発見となり、相対性理論が構築されたわけです。
9  それからすこし経った一九〇八年に、マクスウェルとファラデーの電気力学が相対性原理と結合して擬ユークリッド時空幾何学が発見されたことをドイツの学者ミンコフスキーが研究論文において立証しました。空間と時間を総合して時空統一体をつくりだし、この時空幾何学が擬ユークリッド幾何学であることを明確に立証したのは、他ならぬミンコフスキーその人だったのです。
 以上の事柄から結論づけられるのは、特殊相対性理論の要点は、あらゆる物理的プロセスは時空において行われ、その幾何学は擬ユークリッドであるということです。強電磁と弱電磁の相互作用についてのその後の研究は、これまで述べてきた概念の正しさを明確に裏づけました。時空についての新しい概念は各種物理学分野の発展に大きな影響を与えました。なかんずく、特殊相対性理論から生まれる方程式や相対比を用いずに核内エネルギーを開発したり、加速技術を進歩させる分野で成果を上げることは考えられなかったでしょう。
 物理学的時空についての擬ユークリッド幾何学の発見によって、すでに現在、たとえば相対性理論を新たな視野から考えることができるようになりました。
10  あらゆる物理現象は時空において生起し、時空幾何学はすなわち擬ユークリッドであるとの見解が、慣性系の計算だけに用いられる通常の相対性理論よりもはるかに優れていることが私たち物理学者の研究によって明らかになりました。この見解によって、慣性系計算のみならず、非慣性系計算でも正しさを示す普遍化された相対性原理の構築が可能になります。
 つまり、慣性、非慣性いずれの物理系を選ぼうとも、一切の物理現象が初めの系におけるのと同じように生起するのであり、そこで計測される数値は同じなのです。したがって、私たちとしてはこの無限総体から任意の系を見つけだそうとするいかなる実験的可能性ももっていませんし、またもち得ません。
 このように、現代科学の視点からすると、物質の存在形態としての空間と時間は不可分の一体すなわち四次元時空であり、この時空一体の幾何学は擬ユークリッドであります。もちろん、物質の本性についての私たちの知識がさらに深まっていけば、時空の組成についての私たちの理解もよりいっそう深まるでしょう。

1
8