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日蓮大聖人・池田大作

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大学の未来はどうあるべきか  

「第三の虹の橋」アナトーリ・A・ログノフ(池田大作全集第7巻)

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5  池田 大学は祖国を守り平和を守る砦であるべきではあっても、戦争を推進する人間を生みだしたり、武力開発の研究所になるようなことがあっては断じてなりません。だからこそ、私は創価大学のモットーとして「平和を守るフォートレスたれ」を掲げ、学生諸君に、あくまで平和を守る人材たれと訴えているのです。
 その観点から創価大学はアメリカではアリゾナ大学、中国では北京・復旦・武漢大学、ブルガリアのソフィア大学と、幅広く学生、教員の交換交流を行っています。とくにモスクワ大学と創価大学との教育交流は、そうした未来を担う人材を生みだす原動力となっていくことでしょう。両大学に懸けられた平和の橋を渡る人が多くなればなるほど、国際性・世界性をもったスケールの大きな人間が出てくることは間違いないと私は確信します。
 大学のあり方が世界に開かれたものであればあるほど、そのキャンパスでともどもに学んだ学生たちは、お互いの国の歴史や国民性の違いを十分にわきまえたうえで、人類の平和を生みだす方向で手を取り合っていけることでしょう。
 モスクワ大学には世界各国の青年が学びに来ており、ログノフ総長は多くの留学生に会われていることでしょう。ご専門の量子力学の研究者はもとより、世界に開かれた大学教育の未来を模索する多くの識者と語り合われてきたことと思います。そのようなご経験のうえから、大学の未来はどうあるべきか、大学はどのような人材を輩出していくべきか、といった点について、お考えをお聞かせください。
 ログノフ 大学教育はそれぞれの国の科学・教育・文化興隆の母体でなければならないというあなたのお考えに賛同します。私の深く確信するところでは、社会生活に果たす大学の役割は絶えず高まっています。それは、まず第一に人間の生活のあらゆる側面に対して科学がおよぼしている影響が増大していることとかかわりをもっています。私たちはすでに今日、科学が工業生産、農業、運輸の基盤になっていることを感じとっています。科学なしには情報を蓄積・伝達することや、人間の健康を守ることは不可能です。芸術の領域でさえ、今では科学の成果なしにはすまされません。
 こうしたことから人間の全面的かつ幅広い教育、ヒューマニズムをめざす文化全体の興隆に対する社会の要求が高まっています。そしてこの面で大学が果たすべき役割はとりわけ大きいといわなければなりません。それは、科学技術の進歩における基礎学問の役割の不断の高まり、科学の進歩の過程で見られるさまざまな学問分野間の共同作業によって規定されます。現代科学が解決しなければならない多くの問題は、きわめて総合的な性格を帯びるようになっています。
6  池田 学問の発達は、細かく専門分化する傾向にあり、事実、今日にいたるまで、そうした細分化をたどってきましたが、今日、いわゆる学術間の協力ということが、さまざまな面で求められ、また事実、行われて、幾多の成果を上げています。その機縁になったのは、かつては戦争――私たちにはそうした機縁はまったく必要ありませんが――であったわけですが、最近は環境破壊等の深刻化が要因になっています。私は、さらに、一人一人の人間が幅広い見識をもつことが必要になっており、大学教育もその方向をめざしていくべきではないかと考えています。
 ログノフ 学問と教育の中枢機関たる大学の任務は、何よりもまず、広く、深く思索することができる人間、深遠な理論的知識と、科学的研究の成果の実施応用を展望する能力とを結びつけることができる、全面的に訓練された人間を不断に育成することであります。そのようなスペシャリストの養成は学部学生の水準でも、大学院生の水準でも、さらにはまた、教師の水準でも明確な目的意識をもって行われなければなりません。とくに教師の専門能力の向上は今日ますます重要視されています。
 私の考えでは、将来、社会生活の全領域にわたって大学の影響力が強まるにつれて、その役割も高まると思います。

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