Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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人間の責任性と永遠の生命  

「闇は暁を求めて」ルネ・ユイグ(池田大作全集第5巻)

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33  波と大洋の比喩をあえて、もう一度、ここで取り上げてみましょう。波は大洋と別のものではありません。しかし、波の一つ一つが区別されるように、波と大洋も区別されます。波の一つ一つが空間の中に一つの場を占めており、時間の中に広がっています。波は生まれ、消えていきます。大洋の水だけがそのままであり、そこから波が生じ、また、そこへ還るのです。
 “創造”も同じです。“創造”は何千年、何百年、何十日と、同じように行われていきます。“存在”の主質から万物があらわれ、消えていきます。それは、波がその移り変わるかたちをもち、自身の冒険をし、広がりと波頭と泡をもっているのと同じです。……私は、エネルギーの大洋も同様であるとみます。それは、時間と空間の“無限”を包含しながら、動き、相次いであらわれる波と渦をそこに生じます。その最も低い次元にあるのが“物質”であり、最も高い次元にあるのが“思考する存在”です。それはたぶん、異なった次元ではエネルギーのあらわれ方が異なるということです。
34  しかし、この働きは、波をつくった働きと変わりません。無限の集団的な大洋の広がりの中に飲み込まれた分子は、突如として、共通の一つの運動と、発展する一つのかたちの中に互いに結合します。それは生まれ、増大し、その完成に到達します。それから、再び低下し、破損し、そして消滅するのです。こうして分子はその全体的な貯蔵庫に戻り、やがてまた他の分子と結びつき、新しい波を生じさせるためにそなえるのです。
 しかしながら、それぞれの波は、自分のあとに、もう一つの別の波をひきおこしてきました。生きているものも同様です。生き物も、まったく同じではない、他の分子を集めた他の波を生みます。その質量とかたちと動きは、構成分子の一部分と、先行の波の衝撃の一部を引きついでいます。しかし、ある時間がたつと、この相続と痕は消えるでしょう。
 このことは、私たちの仕事(作品)についても同じく真実です。作品によって、私たちは自分がつくった波の躍動がつづいていくと信じています。一つの芸術作品とか著作の中に刻み込まれた私たちの思想は、たぶん、未来の波を動かし、そこに一つの衝撃をもたらし、その波の形成を助けるでしょう。私の考えでは、そこにたぶん、波の場合のように、私たち自身を超え、死ののちもつづいていく反響があります。しかし、それは、いつまでつづくでしょうか?

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