Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

複雑性か画一性か  

「闇は暁を求めて」ルネ・ユイグ(池田大作全集第5巻)

前後
21  私は、このように、国という単位で、その内側にある多様性を消滅し、画一化された土台の上に、社会的枠組みを強め、他の国との競争力を強化する時代は、もはや過ぎたとみるべきであると考えます。それは、軍事力という野蛮な力を信仰した時代の発想でした。文化の創造力という高貴な力を高めていくには、多様性を重んじ、なによりも個人の独自性を尊重する考え方に立たなければなりません。
 フランスが、その理想的典型であるというのは、たぶん、いいすぎでしょう。フランスにも、さまざまな悩みがあることは、私も知っています。しかし、少なくとも、国としての強化を成し遂げ、欧米ナショナリズムの一画を占めながら、諸地方に伝えられた多様性を重んじ、なにより個人の創造的能力を尊重し、その文化的創造によって近代世界に貢献してきた功績は、随一というべきでしょう。その意味で、私は、全体主義的志向性を今日もまだ改めることができないでいる日本にとって、フランスは、学ぶべきものをもっていると考えます。
22  すでに述べた中に含まれていることですが、日本は、非常に多様な文化を本来、包含しています。日本の民族的起源という問題については、まだつまびらかでない点がたくさんありますが、古い原住民と、北方大陸からの移住者、南方諸島からの移住者等の複雑な混淆によることは疑いありません。そして、歴史的に、古くから統一国家を実現しながら、各地方が独自性をもち、独特の文化を生み出し、伝えてきました。
 思想的、宗教的にも、独特の神道に加えて中国の道教や儒教が入り、そこに仏教、さらに近世には、わずかですが、キリスト教も入っています。こうした多様性は、未来のために豊かな文化を生み出していく貴重な要因になりうると思うのです。

1
21