Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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家庭の保持  

「闇は暁を求めて」ルネ・ユイグ(池田大作全集第5巻)

前後
8  ところで、家庭のもう一つの機能として安定ということを申し上げましたが、この点について若干述べてみたいと思います。第二の父親的機能が低下した現代には、第一の母親的安定機能だけが家庭を支配し、それが子供を甘やかすこととなり放縦な青少年をつくりだし、家庭そのものさえも否定する若者を生み出してしまいましたが、しかし、結局のところ、この機能を無視はできません。日本では田舎を脱出して都会に出た若者が再び田舎に引き返す、いわゆるUターン現象が起きていますが、これは経済事情だけが原因ではなく、もっと根源的な精神的な安らぎのオアシスを求めているのであり、これは、混沌の時代を反映した現象ではないかと私は考えています。
9  あなたもおっしゃったように、家族は生物学的な存在であり、その意味でも家庭は一人ひとりにとって文字どおり自己を生み出した母体です。人が家庭へ還るのは、たんにそこが住家であるからというだけでなく、いわば自らを生み育んでくれたふるさととして、生命の根源としての意味を無意識のうちにもいだき、期待しているからではないかと考えます。したがって家庭は、根源的な意味において疲れを癒しエネルギーを充填するためにつねに立ち還るべき場所として築きあげられなければならないと思います。そのためには、たんに生物学的関係からなるだけの無為の家庭であってはならず、家庭全体に、安穏の中にも人間的成長への“生命の律動”がなければならないと私は考えています。そこに必然的に全体的な人間形成の機能も生じてくると信じます。

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