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日蓮大聖人・池田大作

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後記 「池田大作全集」刊行委員会  

「社会と宗教」ブライアン・ウィルソン(池田大作全集第6巻)

前後
4  さて、「宗教」は未来を拓く基軸たりえるか、新しい世紀へいかなる役割を担いうるか――。
 過去の世紀を振り返り、宗教の“功罪”を比較するなら、“功”より“罪”のほうが多かったのではなかろうか、とするのが池田SGI会長の基本的な認識である(たとえば、米ハーバード大学「世界宗教研究センター」のローレンス・サリバン所長との会談=一九九三年三月二十七日)。
 宗教戦争、聖職者の腐敗、教義の非科学性や現実との遊離……。人類の幸福のためにあるはずの宗教が、逆に多くの不幸をもたらしている。そうした事例をながめるにつけても、宗教のあり方として今日まず要請されるのは“開かれた言葉による対話”である。
 池田SGI会長が、このウィルソン名誉教授との対談をはじめ、世界の多くの識者と語り続けてやまないのも、そうした信念を現実の行動のなかに移しているからであるといってよい。そこに、現代世界に吹き荒れる民族感情といった“閉じた心”を癒し転換していく道も開かれるにちがいない。
 本書のなかでウィルソン名誉教授は「一方に雑多で多様な地方的関心というものがあり、他方に地球的文明と全人類の文化という普遍的で何より重要な目標があり、これら両者を連結する絆が作られ、その溝に橋がかけられることがあるとすれば、それができるのは、おそらく宗教しかないでしょう」(第四部「宗教は文明をリードしうるか」)と語っている。
 その指摘に池田SGI会長は全面的な賛意を表しながら、「宗教が果たすべき根本的な役割は、人間性を豊かに、かつ深く、強くすること」(これを「人間革命」と呼ぶ)であり、「宗教は、この“人間性”の問題に取り組むことによって、まさしく教授が言われるように『その溝に橋をかける』ことができるのです」と応じている。
 「宗教」の光と影が時代を包み、混迷の度を深めている現代であればこそ、読者はこの対談から、未来への多くの示唆と果実を得られるにちがいない。
 一九九四年五月三日
5  〔対談者略歴〕
 ブライアン・ウィルソン(BryanWilson)
 一九二六年、イギリスに生まれる。オックスフォード大学社会学名誉教授、オールソールズ・カレッジ名誉研究員、元・国際宗教社会学会会長。著書は『現代宗教の変容』『唱題すべき時』(カレル・ドベラーレ氏共著)昭和60年9月講談社刊など多数。

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