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日蓮大聖人・池田大作

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家庭の未来について  

「社会と宗教」ブライアン・ウィルソン(池田大作全集第6巻)

前後
11  家庭を侵蝕しているさまざまな社会的な力については、徹底した社会科学的な分析によって初めて認識することができますが、これらのさまざまな力を考えるとき、家庭が以前のような役割を回復することはなさそうです。しかしまた、家庭が全面的に崩壊し去るということも、同じく想像し難いことです。たしかに、人々が施設の中で子供を生み育てるよう組織立てることも可能でしょう。しかし、そのような家庭の代替物は、知能が低く、意欲の薄い、情緒的反応の弱い子供を作ってしまいやすいことは、周知の事実です。親子関係への欲求はいぜん根強く存在しており、この欲求は、実際に家族的構成を要求しています。
 家庭と宗教は、いろいろな面で密接に関連し合っている制度であり、いずれも地域共同体に根差しています。宗教は、あらゆる地域にあって家族関係を正当なものとして認め、年老いた(またしばしばすでに死亡した)世代と、若い人々とがつながっているという意識を強めます。家庭を侵蝕しつつあるさまざまな力は、宗教の働きを妨げる力でもあります。すなわち、技術は、倫理的・精神的知恵に取って代わる知識として、登場しているのです。
12  近代社会には、真の保守主義者というものは、ほとんど存在しません。保守を自称する政党も、たいていは自由放任経済と、それに付随する自由放任の論理に、どっぷりと身を浸しているだけなのです。そしてまた、自然環境の保護を唱えたり、「大きな政府」や多国籍組織を批判したり、「小さいことはよいこと」をモットーにしている人々も、家庭の機能や価値が侵蝕されていることには、まだ気付かずにいるようです。また、彼らが(それが宗教に関わる場合も)何ら共通の宗教的見解を示さないことも確かなことです。
 しかしながら、やはり家庭生活は深い象徴的な意義をもっています。政治家はしばしばこのことを唱えますが、彼らは家庭生活を脅かしているさまざまな力については、ほとんど何も知らないのです。もし宗教指導者たちが、文化の伝承とその障害に関する微妙な問題について誰かに調査をさせたならば、政治家の約束に冷笑気味になっている一般大衆は、おそらく家庭生活の価値に賛同する旨の反応を、直ちに示すことでしょう。
13  池田 宗教は、多くの場合、家族生活によって維持・継承されてきたといえますし、逆に、宗教が、家族生活の伝統を伝えてきました。“宗教”の“宗”という文字は、祖先の霊を意味したともいわれています。仏教においては、祖先の霊を信仰の対象とはしませんが、祖先の霊に安らぎと幸せを送り、その恩に感謝することは、その種々の儀式・祈りの重要な目的の一つとされています。

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