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日蓮大聖人・池田大作

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生物進化への考え方  

「社会と宗教」ブライアン・ウィルソン(池田大作全集第6巻)

前後
5  イスラム律法の全体主義的な性格にもかかわらず、イスラム教徒は、現実の問題の対処においては驚くほど実際的です。律法を解釈し直す誘因が生じた場合には、その律法運用の基礎である根本原則――つまり律法が社会を決めるのであって、社会が律法を決めるのではないという原則――を字義的に容認していることからは想像もできないほど、容易に再解釈が行われてきました。
 主として知的な事柄については、さほどしっかりと問題が把握されずにきたことは明らかです(ただし、そうした事柄が実際的な意味をもつ可能性は、たしかに増大してきています)。イスラム教諸国は、彼らの間で関連のある多様な問題、たとえば産児制限等の問題においても、保守的倫理をあれほど強調している宗教から予想されるよりは、はるかに広い融通性を示しています。
6  池田 仏教的伝統の深い日本では、ダーウィニズムは、最初からほとんど抵抗なく受け入れられました。その最大の理由は、仏教がキリスト教やイスラム教等とは違って、神による天地創造を説かなかったからだと思われます。
 しかし、今後、仏教者に課せられた問題は、進化論と三世の生命観との関係性はどうなるのかを明確にすることです。つまり、一方には、地球上における生物全体の進化という現象があり、それと個々の生命体が三世にわたって流転を繰り返すということの関連は、示しうると思います。しかし、個々の生命体の内包する業の力が具体的に進化にどのように関わっていくのか、また突然変異や適応との関係はどのように捉えるべきかといった問題は、まだ手がつけられていない領域であり、仏教の立場からどのように捉えるかということは、今後の課題であると思われます。
7  (注1)ダーウィン(チャールズ)
 (一八〇九年―八二年)イギリスの生物学者。ビーグル号に乗って南半球を航行しながら動植物を観察し、生物の進化を確認。一八五九年に『種の起原』を公表した。進化論の確立者。
 (注2)突然変異
 親とは大きく異なる形質が子に現れること。突然変異説は一九〇一年にド・フリースが提唱、生物の進化は主に突然変異によって起こるという説。
 (注3)自然淘汰
 ダーウィンの進化論の中心思想。自然界において、ある特定の性質をもつ個体が生存していくうえで、優れた条件や立場に置かれ、子孫を残すこと。
 (注4)“創世記”
 『旧約聖書』の巻頭の書。天地創造の物語に始まる。
 (注5)エラズマス・ダーウィン(一七三一年―一八〇二年)
 生物学者、詩人、医師。生物の進化は、外界の変化に反応する生物自体の力によるとした。
 (注6)中東の三宗教
 ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の三つ。いずれも中東が発祥地である。
 (注7)日本ムスリム協会刊『日訳・注解聖クラーン』(三九:一:6)

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