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日蓮大聖人・池田大作

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医の倫理  

「社会と宗教」ブライアン・ウィルソン(池田大作全集第6巻)

前後
11  ウィルソン 自由な価値観の広範な注入、人類の過去に関する知識、文化の多様性への意識――これらなくして、いったい何が医師に(いやそれどころか弁護士、教師、さらには聖職者にさえ)幅広い思いやりを与えて、その職業的役割を増大させ、活気づけることができるでしょうか。
 西洋では、宗教が、かつてそうした人間的触れ合いの、内容の一部をなしていたはずです。しかし、今日では、専門的職業の人が自らの役割を解釈するうえで、宗教的な物の見方に左右される可能性は、ますます少なくなっています。
 かつてカトリック諸国では特にナーシング・シスターズ(看護修道女)の役目を通して、医学は宗教と密接な関係を保っていたのですが、今日では、そうした諸国においてさえ、カトリック系の病院と国立病院の間にほとんど差異のないことが認められています(この点については、教会系医学とそうでない一般の医学の興味深い混淆が見られるベルギーから、適切な研究が寄せられております)。カトリック系の医師ですら、その職業の技術的規範に固執しており、彼らの患者に対する態度や医学倫理における懸案に対する態度は、カトリック以外の医師とほとんど変わりがありません。
12  医業にもっと強烈な宗教的献身が結び付いているような場合には、あなたの見解を裏付ける事実が、たしかにあります。
 たとえば、その創設以来、医学と身体の健康に強い関心を示してきたキリスト教の一教派であるセブンスデー・アドベンチスト(安息日再臨派(注2))の信仰の中で育った医師は、その面倒見のよいことで、今日のアメリカではよく知られています。他の多くの医師たちがより大きな利潤とより快適な生活様式を追求しているのとは対照的に、再臨派の医師は、医療の需要は大きくても利潤は少なく、現代生活の便宜や楽しみがほとんどない辺地での診療を、しばしば引き受けています。この種の献身は、他のキリスト教諸派においても見られ、そうした医師たちは伝道地に入っていき、往々にして自分にとって不便であるばかりでなく、医療の実施さえ困難であるような条件の中で働いています。
13  (注1)グラマー・スクール
 イギリスの公立中等学校。十六世紀に創立され、ラテン語とギリシャ語を主教科としたが、その後、大学進学準備の機関として古典語、現代語、自然科学などを中心とする一般的教育を行った。
 (注2)セブンスデー・アドベンチスト(安息日再臨派)
 エレン・ホワイト夫人を指導者とするアメリカのセクト。この教団では、当初広く信じられた、キリストが一八四四年に地上に再臨するとの予言が実現しなかったのに対し、それはある重要な出来事がその時天国で起こっていたためであり、十戒の第四戒命(安息日を日曜日でなく週の第七日目の土曜とすること)が厳守された暁に、キリストの地上への再臨が果たされるとの見解をとっている。ホワイト夫人は幻想にとりつかれて予言力を授かったとし、また改良食餌治療の強力な唱道者となり、再臨派信徒に医療的伝道活動を奨励している。活発な福音伝道により、全世界に約五百万人の信徒がいる。

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