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日蓮大聖人・池田大作

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文化の相対性  

「社会と宗教」ブライアン・ウィルソン(池田大作全集第6巻)

前後
6  現代の西洋社会にあっては、過去の比較的首尾一貫した価値体系が、新しい文化的多元性(多民族の共存社会や多様な宗教の並存社会)や、テクノロジー化の影響に出合って、崩壊してしまいました。そこから生じた一つの結果が、今日、自分自身を“パンクス(チンピラ)”と呼ぶ若者たちの、文化的独自性の意識の喪失です(取るに足らないことを意味する、まったく嘲笑的な言葉なのに、彼らは、それを自分自身に当てはめて使っているのです)。
 こうした考えに勢いをつけているのが、馬鹿さ加減や目的観のなさを表す衣服を、意識的に身にまとうことです。また、刺青や珍奇な髪のスタイルや色彩は、自分たちの身体を尊重する心を、まったく放棄していることを意味します。自分たち自身にも、自分たちの文化にも、自分たちの同胞にも、すべての確信を失ったメラネシアの“くだらない人間”と同様に、この“パンクス”たちは、人間の尊厳に対する誇りを喪失していることを主張し、自らがくだらない人間であることを効果的に宣言しているわけです。これらは、おそらく、自らの社会や文化に対して、否定的な考え方に達したことから生じた結果だといえましょう。
7  文化の相対論と文化の崩壊の双方によって浮き彫りにされた疑問は、はたして諸文化は、どのような客観的な基準によって判断されうるのか、ということです。しかも、われわれは言語にしても、思考過程や習慣にしても、程度の差こそあれすべて“文化に縛られて”いるため、このことは一つの問題を提起します。諸々の文化を真剣に比較検討することは、われわれすべてにとって重要なことです。しかし、社会科学的な探究法は、究極的な価値判断のための基礎については、何ら確実なものを提示しません。他方、文化的主体性の意識の喪失は、深刻な社会問題の前兆であるように思われます。
8  (注1)カレー
 英仏海峡に臨むフランスの都市。一三四七年イギリスの領地となったが一五五八年フランスに帰属。イギリスとの連絡港である。この語句は「カレーから先は色の浅黒いアラビア人のような異人種である」の意。
 (注2)メラネシア
 太平洋南西部、オーストラリア北方、赤道以南に散在する島々の総称。イギリス、フランスなどの植民地としてキリスト教化が進み、島によると全島民が改宗した例もある。

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