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日蓮大聖人・池田大作

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宗教は文明をリードしうるか  

「社会と宗教」ブライアン・ウィルソン(池田大作全集第6巻)

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5  そして、そのためには、その運動が掲げている価値観や広めようとしている心的態度が、きわめて高水準の一般性をもって表明されなければなりません。なぜなら、それらは、数多くの異なる文化的背景にも、大きな相違性をもつ人間の諸条件にも、適用できるものでなければならないからです。といっても、表明された価値が一般的、抽象的であればあるほど、人々に、強烈で深刻な関心を呼び起こすことが、ますます困難になることもまた明らかです。人々は、皆、生きるのに忙しく、また、地方的で特定の適用範囲をもつ言葉で、自分たちの問題を取り上げます。彼らにとって、自分たちの個人的な欲求や家族の関心が、人類の直面するより広範な、おそらくは全地球的な問題と、どのような関わりをもつのかを理解するのは、容易なことではありません。人々を、いわゆる“高邁”な理想と彼らがみなすような目的の支持者に加わらせることは、困難なことなのです。
 一方に雑多で多様な地方的関心というものがあり、他方に地球的文明と全人類の文化という普遍的で何より重要な目標があり、これら両者を連結する絆が作られ、その溝に橋がかけられることがあるとすれば、それができるのは、おそらく宗教しかないでしょう。
6  池田 いま教授は「人間的な性向が導き出される源泉は、宗教以外には存在しないようだ」と述べられ「雑多で多様な地方的関心と、全人類の地球的文明・文化という普遍的で何より重要な目標とを連結する絆が作られ、その溝に橋がかけられることがあるとすれば、それができるのは、おそらく宗教しかない」と言われました。このお答えは、私がかねてから抱いている考えと、まったく合致しております。
 宗教が果たすべき根本的な役割は、人間性を豊かに、かつ深く、強くすることです。これを私は、恩師戸田城聖第二代会長の思想を承けて、「人間革命」と呼んでいます。この人間性を深め、豊かにすることは、現代の科学の発達や経済の発展、社会機構の整備などによっては不可能です。というよりも、むしろ、これらの現代の文明や生活様式こそ、人間性を貧弱なものにしてきた原因であるかもしれません。
 この現代社会における、一人一人の人間性の貧弱化が、家庭や地域においてさまざまな問題をもたらすとともに、全人類的次元においても、人類そのものの滅亡をもたらすかもしれない、深刻な問題を引き起こしているのです。まさに、雑多な地方的関心と、普遍的な全人類の目標とをつないでいるものは“人間性”の問題であり、宗教は、この“人間性”の問題に取り組むことによって、まさしく教授が言われるように「その溝に橋をかける」ことができるのです。

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