Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

近代史とキリスト教  

「社会と宗教」ブライアン・ウィルソン(池田大作全集第6巻)

前後
14  仏教の場合、たしかに、その世界観においては科学的に認めがたいものもありますが、それが批判され、否定されたからといって、仏教の宗教としての根本的なものは、少しも傷つきもしませんし、揺らぐこともありません。ですから、仏教は、科学と争う必要を認めないのです。
 仏教が根本的に説いているのは、この世界がいつ、どのように創られたか、とかいったことではないのです。人間の心の世界の問題であり、たとえば、貪りや瞋りなどに囚われて行動すると不幸を招く因になる、といった生命の法理です。これは、世界の歴史や社会形態がどうであるかによって制約を受けるものではありません。
 キリスト教も、もちろん、本質的な人間の生き方についての教えを核としていると思いますが、全智全能の神を立て、その教えの不可謬性を守らなければならないということから、科学がそれに対して否定的な事実を明らかにした場合、人々が神への信頼を揺るがす恐れがあるとして、これと厳しく対決せざるをえなかったのでしょう。そして、その頑なさが、かえって宗教の側への、人々の支持を減少させることになったのではないでしょうか。
15  (注1)教皇インノケンティウス三世(一一六〇年―一二一六年)
 教権を極度に拡大したローマ教皇。在位は一一九八年―一二一六年。第四次十字軍を起こし、イギリス王ジョン、フランス王フィリップとも抗争して屈伏せしめた。
 (注2)ローマ教会の最高権能
 中世教皇権はインノケンティウス三世の時代に帝権をしのぐとともに、教皇への権力集中、典礼教会法のローマ化が徹底され頂点に達した。教会改革、異端審問権も教皇の手に集中した。
 (注3)ルター(マルチン)(一四八三年―一五四六年)
 ドイツの宗教改革者。ローマ教会の免罪符販売を批判し、九十五カ条の抗議書を公表。教皇から破門され、宗教改革に乗り出す。『新約聖書』をドイツ語に訳した。
 (注4)パウロ
 キリスト教の使徒、大伝道者。初め熱心なユダヤ教徒としてキリスト教徒を迫害したが、天啓を受けて回心し、ローマ帝国内の伝道に努めた。六四年ごろローマで殉死。本名サウロ。

1
14