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日蓮大聖人・池田大作

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ルネサンスと宗教改革  

「社会と宗教」ブライアン・ウィルソン(池田大作全集第6巻)

前後
10  池田 教授は、私がルネサンスのもたらした一面について指摘したことを、そのルネサンスから、宗教そのものについての変革作業として受け継いだ宗教改革に分析を進められることによって、より明確にされました。
 ルネサンスの文学や芸術がギリシャ・ローマの古典にまで視野を拡げたことは、必然的に、そこに含まれているキリスト教的信条の枠を超えた人間的倫理をも、キリスト教的信仰の反映として位置づける働きをしたわけです。それが宗教改革において、表面的には、ルネサンス芸術の扱った異教的要素を排除する運動になったりはしましたが、本質的には、教授が指摘されたように、個人的良心の高揚とか、宗教的価値と日常生活の同化といった、いわば宗教的信仰の内面化と一般的倫理への反映という形で、さらに発展したのだと私は考えます。この私の考えは、したがって、教授と同じであると思います。
11  (注1)ルネサンス
 十四世紀から十六世紀にかけてイタリアを起点に全ヨーロッパに波及した芸術及び学問を中心とした革新運動。再生の意味。神中心の中世文化から人間中心の近代文化へ転換する端緒となった。
 (注2)ダンテ(一二六五年―一三二一年)
 イタリアの詩人でルネサンス初期の巨匠。フィレンツェの生まれ。早逝したベアトリーチェへの初恋はその文学にとって大きな意味をもつ。政治に加わり、敗北して追放され、半生を放浪しながら文学に精進した。主著『神曲』の他に『新生』『帝政論』など。
 (注3)ウェルギリウス(前七〇年―前一九年)
 ローマの詩人。叙事詩『アエネイス』の他に『牧歌集』『農耕詩』の作品がある。アウグスツス帝などの庇護を受けた。
 (注4)魔女裁判
 中世のヨーロッパ諸国家とローマ教会が、異端者を魔女として処罰するために行った裁判。異端者撲滅と関連して、特定の人物を魔女に仕立てて弾圧、魔女裁判を行って火あぶり等の刑に処した。
 (注5)エピキュロス派
 エピキュロス(前三四一年―前二七〇年)はアテネで原子論を基礎とする実践哲学を唱えた。この派は、哲学の目的は幸福の成就にあり、それは迷信や死の恐怖を脱した「心の平静」にあると主張した。
 (注6)内在論
 キリスト教神学において、神は宇宙のいたるところに内在するという説。
 (注7)決定論
 人間の活動を含むあらゆる事象・現象は、すでに既定の原因によって決定されているという哲学的理論。個人が自らの行動を意志の自由によって選択することはできないとする。
 (注8)エラスムス(一四六六年―一五三六年)
 オランダの人文主義者。宗教に対しては自由思想を抱き、宗教改革に同情した。主著『愚神礼讃』の他に『自由意志論』など。
 (注9)内面化
 個人が、自らの社会における諸価値、思考過程、言語、規範、基本的な社会的カテゴリーなどを取り入れ、「自分のもの」とし、それがあたかも自分の「本質をなすもの」となるにいたる過程をいう。

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