Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

セクト間の分裂と憎悪  

「社会と宗教」ブライアン・ウィルソン(池田大作全集第6巻)

前後
3  ところが、他のグループのキリスト教徒の行うこととなると、彼らにとってより身近な関心事となります。なかんずく、つい最近まで自分たちの信仰上の仲間だった人々の動向は最大の関心事となり、何かといえば、彼らのやることなすことがすぐに引き合いに出されます。ついこのあいだまで自分たちと一緒に親しく宗教的儀式を行ってきた人々が、いまや別なことをやっているということが、激情を掻き立て、裏切られたという感情を引き起こすのです。
 これに付け加えなければならないのは、人間の強い前向きの感情は、後ろ向きの感情に変質しやすいという、より一般的な事実です。愛情・温情・友情といった感情は、たんに中立的な感情に変質するよりも、むしろ敵意・憎悪・嫌悪感情へと変質しやすいものです。ある人々に対する自分の感情が中立の域を出ないという場合には、愛や憎悪は、さほど容易には掻き立てられないものです。ところが、愛情の対象であった人々に対しては、突然に背かれると、ただちに正反対の強い感情が生じます。
 一つのセクト内の緊張が、当事者すべての強い関心を集めるようになると、その最終的な帰結として、必ず強度の感情が掻き立てられます。分裂が全面的に回避された場合には、蘇った強い愛情が、そして、分裂が生じた場合には、強烈な敵愾心が生じるのです。数あるキリスト教の諸例の中で、ごく普通に見られるのは、まず教義上の誤りが非難され、それに続いて、分裂が生じるまでは「愛する兄弟たち」として包容されてきた人々の生活態度や、真剣さの不足や、さらには彼らの不品行までもが非難され、これらが複合されていくということです。
4  (注1)聖餐式
 洗礼式と並んで重視されるプロテスタントの基本の儀式。キリストがはりつけになる前夜の最後の晩さんを記念し、キリストの身体と血を象徴するパンとぶどう酒を会衆に分け与える。カトリックでは聖体拝領とよぶ。

1
3