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日蓮大聖人・池田大作

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権威主義解消の道  

「社会と宗教」ブライアン・ウィルソン(池田大作全集第6巻)

前後
10  もとより、教義の根本的な問題については、論争が行われました。その場合の心構えとして、釈迦牟尼は「たとえ菩薩たりといえども、経文を根拠とした主張でなければ、人々はそれを用いてはならない」と戒めています。中国や日本においては、そうした仏教教義上の論争は、しばしば権力者の立ち会いのもとで行われました。しかし、権力者は論争の勝敗を判定するために立ち会うのではなく、勝敗を決するのは当事者の仏教者でした。論者は明らかに反論に窮したとき、自ら敗北を認め、勝者の教えに従うことを誓ったのです。権力者は、勝敗が公正に行われるための監視役を務めたわけです。この点も、もし、私の認識に誤りがなければ、キリスト教において、宗教会議で、権力者が判定者あるいは決断者の役割を果たしたのと、根本的に異なっているのではないでしょうか。
 要するに、仏教においては権威を認められたのは何よりも法(ダルマ)であり、それが説かれた経典なのです。また、それに基づいた智慧・道理であったわけです。もちろん、特定の人物が伝説化されて、ある種の権威をもった例もないわけではありませんが、それは例外的なことで、基本的には、右に述べたようなやり方で、正しい教えが伝えられてきたといえます。
11  (注1)ウェズリー(ジョン)(一七〇三年―九三年)イギリスの神学者・牧師。弟のチャールズらとともにメソジスト教団を興した創設者。
 (注2)クエーカー教一六六〇年代にイギリスで創始された小さいながらも強力な教団(創始者はG・フォックス)。個人の良心(“内なる光”)の開発を強く求め、誓約を拒否し、素朴、清廉、真実を強調し、黙祷を行う神秘主義的傾向を帯びた一派。平和主義に立脚するとともに、かつて長期にわたって衣服や演説の簡素さを重んじ、誰を呼ぶに際しても敬称を排した。「クエーカー」はあだ名で「震えおののく者」の意。正式名は「フレンド会」。
 (注3)ブレズレン運動一八二八年から三〇年にかけて形成されたキリスト教の一般信徒運動。キリスト教創始後の最初の数百年間に広まっていた教会秩序を回復することを目指し、あらゆる形態の聖職者の配置を放棄して、会衆による自治を実現することを強く主張する。いくつかの教団に分裂しており、主としてプロテスタント諸国で活動している。

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